目次
「チューリップの種と球根の違いがわからない」「植物の有性生殖って何?」という疑問を持つ中学生や、
「花粉管が上手に観察できない」という悩みを持つ先生たち
の疑問を解決します。
こんにちは。頭文字(あたまもんじ)Dです。
中学生に勉強を教えてかれこれ25年以上になります。その経験を活かして、「授業を聞いても理科がわからない人」を「なるほど、そういうことだったのか」と納得してもらうためにこの記事を書いています。
中には、中学校の先生の悩みを解決するヒントもあるので、先生たちにも読んでいただければ幸いです。
これまでも実験の数が少なかった生殖の単元ですが、令和3年度からの教科書改訂でさらに少なくなっています。
その少なくなった実験の1つが花粉管の観察です。(なお、教育出版の教科書では、発展的な実験として紹介されています。)
実験が少なくなると中学生のテンションは下がります・・・。
基本的に先生のテンションも下がるはずですが・・・この実験が減ったことに内心喜んでいる先生がいるのでは?と思います。
というのも、
花粉管の観察は、かなり難しい実験
だからです。
花粉を観察することは、とても簡単です。
花粉をスライドガラスの上に落して、カバーガラスをかけて顕微鏡で観察すれば、観察できます。
でも、花粉管を観察する観察は難しいです。
それは
花粉管が伸びていかないから
なのです。
どうして難しいかというと、
授業の前にする先生の予備実験で花粉管がうまく伸びたとしても、中学生が実験をするときにはまったく伸びない
ということが起こるからです。
これは、生物を相手にしているので仕方のないことと言えます。
化学変化と違い、「絶対にそうなる」ことは生物ではありえません。
人間の思った通りに全てが動くとは限らないのが生物の実験であり、そこに面白さがあります。
でも、中学生に実験を教える先生の立場で考えると、この実験は
リスク(危険:失敗の可能性)が大きくリターン(得られるもの:観察できる)が少ない
と言えます。
だから、「リスクを少なくできる」と内心喜んでいる先生もいるかもしれません。
だからこそ、そのような先生や中学生に伝えたい実験があります。
それは
シロツメクサの花粉管の観察
です。
今まで何回も行っているのですが、誰も発見できなかったという大失敗をしたことはありません。
ほとんどの班が、無事に花粉管を観察することができています。
成功率はかなり高い方法なので、先生たちも安心して実験できると思います。
やり方は簡単
①シロツメクサの花の1つをとって開く。
②スライドガラスの上にある寒天培地に花粉を落とす。
③顕微鏡で観察する。
書いてしまうとこの通りなのですが、シロツメクサの花の1つはおそらく肉眼で見える限界に近い大きさなので、よく見えない人もいます。
そのような人は、ルーペを使うか、見えなくてもいいとあきらめて、スライドガラスの上にある寒天培地に適当に花粉をつけます。
なお、教科書では、寒天培地に花粉を落とすと書いていますが、保存をしないのであれば、ただの砂糖水を使う方法もあります。
この方法については、こちらの記事をご覧ください。
http://www.edu.pref.kagoshima.jp/curriculum/rika/chuu/tyuugaku2/kyouzai/01page/page20.htm
私の場合は、砂糖水で行っています。
それでは、観察した結果です!
・・・といきたいところですが、現在北海道はまだシロツメクサが生えていないので観察することができません。
だから、もう少し暖かくなって、シロツメクサを使って実験ができるようになってから写真をつけて説明します。いましばらくお待ちください。
実験について補足します。
今まで実験をやってわかったことです。
シロツメクサの花粉管は現在進行でのびていない。ということです。
教科書では、10分ごとに観察して、花粉管が徐々に伸びていくことを観察するのですが、それができる可能性は低いです。
正確に言うと、「花粉管が伸びていく様子を観察する」のではく、「シロツメクサの柱頭で伸びた花粉管を観察する」ことになります。
意味合いは少々変わりますが、花粉管が見えたときの喜びは大きいので、ぜひ実験してほしいです。
植物というと、無性生殖のイメージが強いのですが、植物も有性生殖をします。
「種子」とは、植物が有性生殖をしてつくるものなので、有性生殖をする植物はかなりたくさんの種類があります。
ここで、誤解している人が多いので、少し説明しておきます。
チューリップを植えたことがある人は、「球根」を植えたと思います。
では、「球根からチューリップを育てることは、有性生殖でしょうか?無性生殖でしょうか?」
少し考えてみてください。
わかりましたか?
答えは「無性生殖」
です。
「球根」とはその名の通り、「根」です。
栄養をたくさんたくわえた根を植えて、新しい個体を生み出すので、無性生殖の栄養生殖です。
詳しい説明は、こちらの記事をご覧ください。
無性生殖と有性生殖~”寿命”は進化がつくりだした?生物の殖え方と寿命の意外な関係~
これに対して、チューリップが種子から芽を出して育つのは「有性生殖」です。
「有性生殖と無性生殖では何が違うの?」と思う人も多いと思います。
この疑問については、またの機会に説明しますので、少々お待ちください。
それでは、植物の有性生殖の過程、言い換えると「受粉してから、種子ができるまでの過程」を説明します。
1年生の時に、学習した内容です。
めしべの柱頭に花粉がつくことを「受粉」といいました。
植物の有性生殖はまさに「受粉」から始まります。
ついでに、1年生の時に習った内容を復習しておきましょう。
柱頭・・・めしべの先端の部分
子房・・・めしべの元の、ふくらんだ部分
胚珠・・・子房の中にある丸い粒
やく(花粉のう)・・・おしべの先端にある。花粉が入っている
これくらい思い出しておけば、十分でしょう。
めしべの柱頭についた花粉から、「花粉管」が出てきます。
そして、花粉管の中を「精細胞」が通っていきます。精細胞は、胚珠の中にある「卵細胞」を目指します。
精細胞が卵細胞までたどり着くと、それぞれの核を合体させます。これを「受精」といいます。
また、受精後、卵細胞は「受精卵」になります。
動物と同じように、植物でも受精卵は細胞分裂を繰り返して「胚」になります。
1年生の時に学習したように、受粉後(正しく言うと「受精後」)胚珠は種子に、子房は果実になります。
いかがでしょうか?植物の有性生殖の全体像がイメージできましたか?
「受粉して、精細胞と卵細胞の核が合体する」ところまでは動物と異なりますが、受精卵になった後は、ほぼ同じですね。
このように、
何が異なるのか、何が同じなのか
をわけて理解していくと、覚えやすいと思います。