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細胞の観察の仕方と細胞のつくり~生物学の基本となる観察のしかたと、ちょっとかわった細胞の観察方法を教えます~

 細胞を観察する方法を知りたい、細胞のつくりを知りたい、動物細胞と植物細胞の違いを知りたい
 こういった疑問に答えます。
本記事の内容
1 細胞の発見の歴史
2 細胞の観察方法
3 細胞の観察方法プラス・ワン
4 細胞のつくり

 こんにちは。頭文字(あたまもんじ)Dです。
 中学生に勉強を教えてかれこれ25年以上になります。その経験を活かして、「授業を聞いても理科がわからない人」を「なるほど、そういうことだったのか」と納得してもらおうとこの記事を書いています。
 定期テストや実力テスト・高校入試などのお手伝いができればと思います。

1 細胞の発見の歴史

 細胞を世界で初めて発見したのはロバート・フックさんと言われています。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AD%E3%83%90%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%BB%E3%83%95%E3%83%83%E3%82%AF#/media/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:Christiaan_Huygens-painting.jpeg
 「ロバート・フック」ってどこかで聞いたことありませんか?
 そうです!1年生の時に理科の教科書に出てきた「フックの法則(ばねの伸びは、ばねにかかる力の大きさに比例する)」を発見したフックさんです。
 フックさんはなんと、顕微鏡を発明しました。といっても、今のような高性能な顕微鏡ではなく、レンズと光を集める簡単な装置がついたものでした。だから、解像度(物体がはっきりと見える度合い)はかなり低かったと思われます。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AD%E3%83%90%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%BB%E3%83%95%E3%83%83%E3%82%AF#/media/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:Hooke-microscope.png
 それでも、今まで目で見ることができなかった小さいものを見ることができたことは、衝撃的な事でした。フックさんは、身の回りにあるいろいろな物を顕微鏡で観察していきました。
 フックさんが描いたコルクのスケッチがこれです。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AD%E3%83%90%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%BB%E3%83%95%E3%83%83%E3%82%AF#/media/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:RobertHookeMicrographia1665.jpg
 なお、現代の顕微鏡を使ってコルクを観察すると、このように見えます。

 フックさんが見たものよりも大きく見えていますね。(ちょっとピントがずれていますけど・・・)

2 細胞の観察の方法

 それでは、現代の顕微鏡を使って、実際に細胞を観察してみましょう。
 教科書には
①オオカナダモの葉
②タマネギの表皮
③ヒトのほおの細胞

を見ることになっています。
 それぞれの実験のやり方を説明する前に、細胞を観察するときに使う薬品について説明します。
 「染色液」と呼ばれる細胞の一部分を染めるための薬品です。
 教科書には主に
酢酸カーミン液
酢酸オルセイン液
酢酸ダーリア液

の3つが紹介されています。どれか1つでいいので、染色液の名前を覚えましょう。
 なお、「酢酸」は「さくさん」と読みます。
 「すさん」と読んでしまうと、かなり恥ずかしいので気を付けましょう。
 それでは実験の方法です。

①オオカナダモの葉

 オオカナダモ(”アナカリス”とも言います)の葉を1枚ちぎり、スライドガラスの上に置きます。
 その上にカバーガラスをかけて顕微鏡で観察しましょう。

 いたる所に緑色の粒が見えます。これが「葉緑体」です。「光合成」を行っています。
 また、細胞と細胞の間がはっきりと分かれています。
 これは「細胞壁」という厚い壁があるからです。
 次に、カバーガラスを1度はずし、染色液を1~2滴落としましょう。2~3分おいてからカバーガラスをかけて顕微鏡で観察します。
 細胞の中に赤く染まった丸いつくりがあるのがわかるでしょうか。(かなり色がうすいですが・・・)

 この赤く染まった部分が「核」です。

②タマネギの表皮

 タマネギを小さく切り、表皮をはがします。
 教科書ではピンセットを使うように書いていますが、私がやると表皮を破いてしまうので、手でやった方がやりやすいです。
 スライドガラスとカバーガラスではさんで顕微鏡で見ると、次のように見えます。

 オオカナダモの葉と同じく、細胞と細胞の間がかなりはっきり分かれています。「細胞壁」があるからです。
 ところが、オオカナダモと違って緑色の粒がありません。
 「葉緑体」がないからです。
 タマネギの表皮は光合成をおこないません。光が当たらないからです。だから葉緑体がないのです。
 次に、タマネギの表皮に染色液をつけます。2~3分待ってから顕微鏡で観察してみると次のように見えます。

 染色液で赤く染まる部分が、けっこうハッキリ見えます。細胞に1つずつ「核」があることがわかります。

③ヒトのほおの細胞

 最後に、ヒトのほおの細胞を観察してみましょう。
 つまようじのとがっていないほうで、ほおの裏側をこすってみましょう。
 ちょっと強めにこするのがコツです。ちなみに、とがった方でこすると流血しかねないので、注意しましょう。
 つまようじについた水っぽいものをスライドガラスにつけます。カバーガラスをかけて、顕微鏡で観察してみましょう。
 植物の細胞と違って、どこにあるかわからないので捜すのに時間がかかるかもしれませんが、粘り強く探してみましょう。
 よ~く探すと、次のような細胞が見えるでしょう。

 「これ本当に細胞なの?」と思う人もいるかもしれません。
 形がはっきりしていないからです。
 なぜ形がはっきりしないのかというと、「細胞壁がないから」です。
 細胞壁は固くて厚い壁なので、細胞壁がないと変形します。
 また、細胞の中身が流れ出ないようにするやわらかい膜のことを「細胞膜」と言います。
 次に、染色液で染色してみましょう。
 次のように見えるはずです。

 「核」があるので、細胞であることがはっきりしました。

3 細胞の観察の方法プラス・ワン

 オオカナダモ、タマネギ、ヒトのほおの細胞は、どの教科書にも載っている実験がやりやすい素材です。
 でも、「この他の細胞も見たい!」という人もいるでしょう。この他の細胞を見るにはどうしたらよいのでしょうか?
 オオカナダモなどが観察しやすいのは、観察する細胞の厚さが”うすい”からです。
 細胞の厚さがうすいので、光がとおりやすく、ピントが合わせやすくなります。
 その他のもの、例えばバラの葉は肉厚です。
 だから、そのままスライドガラスにのせて観察しようとしても、光がとおらないので暗くて見えません。
 どうすればよいのか?
 それは
木工用ボンドを薄くぬって乾かす、乾いてからセロテープを貼ってはがして観察する
のです。
 木工用ボンドをぬると、目では見えない小さな凸凹(デコボコ)にも入り込み、細胞の形を忠実に写します。
 木工用ボンドは乾くと透明になるので、光はよく通ります。
 だから、顕微鏡で細胞の形を見ることができます。
 この方法であれば、色々な植物の気孔なども観察することができます。
 (今は冬で植物が咲いていないので、春になって植物の葉が出てくるまで少し待ってください。植物の葉の気孔の様子を紹介したいと思います。)

4 細胞のつくり

 細胞の観察が終わったところで、細胞のつくりをまとめていきましょう。
 動物細胞と植物細胞でつくりが大きく違います。

①動物細胞


 最初に、染色液によく染まる丸いつくりです。「核」と言います。
 次に、核以外の部分をまとめて「細胞質」と言います。
 図では、何もないところを指しているようですが、これは「核以外のところ」という意味で指しています。だからテストなどで聞かれたら「細胞質」と答えましょう。
 最後に、細胞質の外側にある膜です。「細胞膜」と言います。
 細胞膜があるので、細胞の中身が流れださないのですが、細胞膜は柔らかいです。
 だから動物の細胞は変形しやすいのです。

②植物細胞


 動物細胞と同じように「核」「細胞質」「細胞膜」があります。
 この他に、緑色の小さい粒である「葉緑体」があります。葉緑体では「光合成」が行われ、デンプンなどの栄養分がつくられます。
 細胞膜の外側に厚い壁があります。「細胞壁」です。
 細胞壁は固くて丈夫なので、あまり形が変わりません。
 もしも植物が枯れてしまっても細胞壁の形は変わりません。
 フックさんが観察したコルクは、乾いた植物を見たものですが、細胞壁の形がしっかりと残っていましたね。
 なぜ植物には細胞壁があるのかというと、「細胞を丈夫にするため」であると考えられています。
 動物なら、危険を感じて逃げることができますが、植物は動けません。
 だから、少々のことで細胞が壊れないために、細胞壁が発達したと考えられています。
 最後に、「液胞」です。この中に、多様な成分が溶け込んでいると言われています。
 液胞が何のためにあるのか、わからない部分もあるのですが、「ゴミ箱のような働きをしている」とか「クッションのはたらきをしている」と考えられています。
 細胞が古くなるにつれて液胞が大きくなっていくので、要らないものをためているとか、物がぶつかった時にあえてつぶれやすい部分を作ることで、細胞を守るというように考えられています。
 また、この液胞が大きくなるほど、果物などが熟してくることが知られています。
 動物細胞と植物細胞の違いについては、こちらのサイトにも詳しく紹介されているので、興味のある方はご覧ください。(毎度おなじみの理科ねっとわーくのサイトです)
https://rika-net.com/contents/cp0110/saiboh_page/saiboh_1.html
 高校になると、もっと詳しく細胞のつくりを学ぶことになりますが、中学生ではここまで理解しておけば十分でしょう。
 細胞のつくりは動物や植物の学習の基本となります。
 しっかり覚えておきましょう。

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