細胞分裂って何?、細胞分裂の観察方法を知りたい、もっと上手な細胞分裂の観察方法を知りたい
こういった疑問に答えます。
本記事の内容
1 生物って、どうやって大きくなっているの?
2 細胞分裂の観察の仕方
3 細胞分裂の観察方法プラス・ワン
4 細胞分裂の過程~「染色体」の4つの動きでバッチリ~
こんにちは。頭文字(あたまもんじ)Dです。
中学生に勉強を教えてかれこれ25年以上になります。その経験を活かして、「授業を聞いても理科がわからない人」を「なるほど、そういうことだったのか」と納得してもらおうとこの記事を書いています。
定期テストや実力テスト・高校入試などのお手伝いができればと思います。
「生物って、どうやって大きくなっているの?」
こう聞かれて、答えに迷う中学生は多くいます。
例えば、「トウモロコシの種を植えると1.5mくらいに成長して、トウモロコシができる」とか「生まれたときは3000gの赤ちゃんが大人になると100kgになる(ちょっと太りすぎ?・・・いや、ちょっとじゃない・・・))ということは誰でも知っています。
しかし、「どうやって大きくなっているの?」と聞かれて、答えられないのはなぜでしょうか?
その理由の1つに、
答えにくい形の質問である
ことがあげられます。
もう少し、答えやすくすると、次のようになります。
「生物が大きくなるときは、
細胞の
大きさや
数や
形が
どのように変化しているのか?」
このように聞かれると、1つずつ自分の考えを説明していけばいいので、答えやすくなりますね。
例えば、
「細胞の数が増えて、細胞の大きさが大きくなって、形は変わらない」
などです。(当たっているかどうかは別ですよ。念のため)
中には、次のように考える人もいます。
「細胞の数は変わらなくて、細胞が縦に長くなるから大きくなる」
と。
なかなか、ユニークな考え方ですね。
答えを言ってしまうと、
生物が成長するとき、
細胞の数が多くなり、
元の細胞と同じ大きさと形になる。
のです。
細胞の数が殖えるとき、一般的な細胞では1つの細胞は2つの細胞に分かれます。
「一般的」と書いたのは、特別な細胞分裂というものがあって、その細胞分裂は1つの細胞が4つになるからです。
中学校理科の内容でも「減数分裂」という言葉を学習しますが、1つの細胞が4つに分かれる過程は高校の生物で学習します。
そのため、この記事では一般的な細胞分裂である「体細胞分裂」にのみ説明します。
それでは、細胞分裂を観察してみましょう。
用意するのは、タマネギの根と顕微鏡、それに塩酸とお湯、柄つき針などです。
【手順】
①タマネギの根を先端から5mmくらい切り取り、塩酸の中に入れます。
②塩酸の中に入ったタマネギの根を約60℃のお湯に入れ、温めます。
→塩酸で処理されることで、タマネギの根がやわらかくなります。
③ピンセットなどで根を塩酸から取り出し、かるく水洗いします。
④タマネギの根をスライドガラスの上にのせ、柄つき針で軽くつぶします。
⑤染色液(酢酸カーミン液、酢酸オルセイン液、酢酸ダーリア液)を数滴たらし、数分間おきます。
⑥カバーガラスを上に置き、ろ紙ではさんで根を上から押しつぶします。
→根の細胞がバラバラになって観察しやすくなります。
⑦顕微鏡で細胞を観察します。400倍くらいが観察しやすいでしょう。
というような手順で観察を行います。
難しいのが「⑥ろ紙ではさんで上から根をおしつぶす」ところです。
強すぎるとカバーガラスが割れるし、弱すぎると細胞がバラバラにならず、かさなって観察しにくくなります。
何度かやるとコツがわかるのですが、1時間の授業で何度もやるのは無理でしょう。だから、運まかせか…。
さて、テストでは、実験操作の理由を理解しておくことが大切です。
特に大切な部分は、
②塩酸の中に入ったタマネギの根を約60℃のお湯に入れる→タマネギの根をやわらかくするため
⑥カバーガラスを上に置き、ろ紙ではさんで根を上から押しつぶす→細胞をバラバラにするため
です。この2つの操作の理由をしっかり覚えておきましょう。
上手にできると次の写真のような細胞が見えます。
今回は、タマネギの根と、ソラマメの根の細胞の様子を撮影しました。
前回の記事で紹介した、タマネギやオオカナダモの細胞と見比べてみてください。
細胞の観察の仕方と細胞のつくり~生物学の基本となる観察のしかたと、ちょっとかわった細胞の観察方法を教えます~
さて、上手に観察できたでしょうか?
この観察は3年間の中学校の観察の中でも特に難しいです。
教科書では、タマネギを水につけて出てきた根を使うように書かれていますが、それよりも
タマネギの種子から出てきた根を観察する方法もあります。
私、頭文字Dが行った感じでは、種子から出た根の方が観察しやすかったです。
「もっと上手に観察を行いたい」という人は、ぜひ試してみてください。
細胞分裂の観察をすると、細胞の中にあるはずのものがないことに気付きます。
それは
核
です。
細胞のつくりを勉強した時に、「核は細胞に1つある」と覚えましたね?
その核が、細胞分裂の時にはなくなってしまうのです。
代わりに、染色液によく染まるひも状のつくりが見えます。
それが
染色体
です。
実は、核の中にはこの染色体が入っているのですが、普段は核の殻のようなものがあるので中身を見ることができません。
細胞分裂が始まると、最初に核の殻のようなものがなくなり、中の染色体が出てきます。
次に、この染色体は、細胞の中央に一列に並びます。
さらに、それぞれの染色体が半分に分かれて細胞の両端に移動します。
半分になった染色体が元の形になります。
最後に、細胞質が2つに分かれ、核が現れて細胞分裂が終了します。
言葉だけだとイメージしにくいので、図と一緒に覚えましょう。
①細胞分裂前の細胞
②核が消えて、染色体が現れる
③染色体が中央に並ぶ
④染色体が半分に分かれ、両端に移動する
⑤染色体が元の形に戻る
⑥細胞質が2つに分かれ、核が現れて細胞分裂が終了する。
覚えるときは、太字で書いた染色体の動きに注目することがポイントです。
「染色体が現れる」「中央に並ぶ」「半分に分かれ、両端に移動する」「元の形に戻る」と、4段階に分けて覚えましょう。
最後にちょっと発展的な内容についてふれます。
細胞分裂の時に現れる染色体ですが、生物の種類によって本数が決まっています。
今回実験で使ったタマネギの染色体は16本で、エンドウ豆の染色体は14本、黄色ショウジョウバエの染色体は8本です。(覚える必要はありません。)
これに対して、ヒトの染色体は46本(これは覚えておくといいでしょう)であり、これだけで考えると
ヒトは進化しているから、染色体の数も多い
と思いがちです。
しかし、チンパンジーの染色体は48本で、ヒトより2本多くなっています。
また、ニワトリは78本、サワガニが82本、スギナが216本と進化のレベルと染色体の数は比例しないことがわかります。
ヒトの染色体が一番多いわけではないのです。
また、染色体は同じ形のものが2本ずつあることが知られています。
ヒトは、23組の染色体が2本ずつあるので、合計で46本の染色体があります。
23組のうち、22組までは誰もが同じ染色体なのですが、23組目の染色体だけが形の違うものがあります。
その形の違いにより、2種類のヒトに分かれるのですが、何の違いか分かるでしょうか?
そうです、男性と女性に分かれるのです。
23組目の染色体にはXとYという記号がつけられており、XXの組み合わせだと女性が、XYの組み合わせだと男性になることが知られています。
染色体の本数や23組目の染色体の違いについては、中学校では学習しませんが、知っていると面白いと思います。
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