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こんにちは。頭文字(あたまもんじ)Dです。
中学生に勉強を教えてかれこれ25年以上になります。その経験を活かして、「授業を聞いても理科がわからない人」を「なるほど、そういうことだったのか」と納得してもらおうとこの記事を書いています。
今回は、中学2年生理科化学変化の単元の中から「質量保存の法則」を説明します。
今回の記事では次のようなことがわかります。
・質量保存の法則の実験
・(気体が発生する実権で)ふたをゆるめると質量が小さくなる理由
タイトルにも書いたとおり、今日説明する質量保存の法則は、全宇宙で通用している(はず)普遍的な法則です。とっても大切な考え方なので、しっかり理解しましょう。
今日は、2つの実験について説明します。
最初に「沈殿が生じる化学変化」を行ってみましょう。
”沈殿”とは溶媒にとけなかったものが時間が経つにつれて下の方にたまっていく現象です。
教科書には硫酸ナトリウム水溶液という無色透明の液体と、塩化バリウム水溶液というこちらも無色透明の液体を混ぜる実験が書かれています。
どちらも無色の液体なのですが、混ぜ合わせると試験管の中が白色に変化します。しばらく経つと、下の方に白色の沈殿がたまります。
この化学変化を利用して、化学変化の前後における質量の変化について調べていきましょう。
最初に硫酸ナトリウム水溶液と塩化バリウム水溶液を入れた容器ごと質量を測定します。
仮に、90.7gだったとしましょう。
次に硫酸ナトリウムと水溶液と塩化バリウム水溶液を混ぜ合わせます。
最後に質量を測定してみましょう。注意点は空になった容器を電子てんびんにのせ忘れないようにすることです。(注意しないと、意外とのせ忘れる人が多いです。)
その質量は・・・90.7gになるはずです。
つまり、
沈殿が生じても化学変化の前後で全体の質量は変化しない
ことがわかりました。
ちょっと余談になるのですが、このときの化学変化について説明します。中学校のテストにでることは、まずあり得ないのでここは読み飛ばしてもかまいません。
硫酸ナトリウム水溶液と塩化バリウム水溶液を混ぜ合わせると、次のような反応が起こります。
硫酸ナトリウム + 塩化バリウム → 硫酸ナトリウム + 塩化ナトリウム
ここで、
塩化ナトリウムとは食塩
のことです。塩素原子とナトリウム原子が1個ずつ結びついているので、化学式は「NaCl」になります。
また、硫酸ナトリウムの化学式は「NaSO4」となります。(下につける数字が書けないので、赤字で書いています)今の段階では難しい化学式ですね。でも、高校になるとこのような化学式は当たり前になってきますので、今のうちに見ておく(覚えなくていいけど)こともいいかなと思います。
この硫酸ナトリウムですが、健康診断の時に使われています。
健康診断の時に胃のレントゲン写真を撮影するのですが、胃の中に食べたものが入っていると黒く映って、ガンなのか食べ物なのかがわからなくなってしまいます。
だから、胃のレントゲンを撮るときは、数時間前から飲食をしないで、胃の中を空にしておく必要があります。
ただし、空の胃袋は縮んでいくという性質があります。だから、空っぽの胃をレントゲン撮影すると、縮んでしまってうまく撮影できません。
そこで、「胃の中を膨らませるけれど、レントゲンには一切映らない物質」で胃の中を満たす必要があります。
その時に利用されるのが、硫酸ナトリウムなのです。
レントゲンを撮影する前に、硫酸ナトリウムを飲みます。そして、体を回転させたり、頭を下にしたりして、胃の中に硫酸ナトリウムを満たしていきます。それから、レントゲン写真を撮影します。
ところが、硫酸ナトリウムは石膏の成分に似た物質でもあります。だから、放っておくと胃の中で固まってしまう可能性があります。
だから、レントゲン撮影後は下剤を飲んで硫酸ナトリウムを一刻も早く出してしまう必要があります。
通常は1日で出てくるのですが、人によってまたは状況によって2~3日かかることもあるようです。
まあ、体の中から無事に出てくれれば問題ないのですが、たまにうまく出てこない人がいるそうです。・・・ものすごく痛いので、入院することもあるとか・・・。恐ろしい話です。だから、将来大人になって健康診断で胃カメラを撮影することになったら、検査の後は忘れずに下剤を飲むことにしましょう。
続いて、気体が発生する化学変化での質量の変化を調べてみましょう。
教科書によって、塩酸に石灰石を入れて実験する方法と、塩酸に炭酸水素ナトリウムを入れて実験する方法に分かれるのですが、どちらもほとんど同じなので今回は石灰石(炭酸カルシウム)を入れる方法で説明します。
ペットボトルなどの容器の中に石灰石を入れ、試験管に入れた塩酸をそっと入れます。
ふたをしっかりとしめた後、全体の質量を測定します。
仮に、110.0gだったとしましょう。
次に、ペットボトルを傾けて、塩酸を試験管の中からペットボトルの中に移動させます。すると石灰石と塩酸が反応して、ブクブクと気体が発生する様子が見られます。
実験の様子はこちらをご覧ください。(映像では、先にふたのないビーカーで実験を行ってから、密閉されたペットボトルで実験を行っています。下の説明はあくまで教科書の実験に沿って説明していますので、ご注意ください。)
https://rika-net.com/outline.php?id=00002057002g&top=1
ペットボトルをかるく握ってみると、気体でパンパンになっていることがわかるでしょう。
そのままの状態で質量を測定すると・・・、最初と同じ110.0gになるはずです。
つまり、
気体が発生しても、化学変化の前後で全体の質量は変化しない
ことがわかりました。
この実験はさらに続きがあります。
パンパンにふくらんだペットボトルのふたをゆるめてみましょう。プシュっと音がして気体が逃げていきます。
その後、質量をはかってみます。ふたをはずした場合は、ふたも含めて質量をはかるように気をつけてください。
ふたをゆるめてから質量を測定すると
質量が小さくなっている
ことが確認できます。
まとめると
密閉した容器の中では化学変化の前後で質量は変化しない
容器のふたをゆるめると質量は減少する
となります。
それでは、塩酸と石灰石の反応で、どのようなことが起こったのかを考えていきましょう。
参考としてこちらのアニメーションを見てください。理科ねっとわーくにのっているアニメーションなのですが、イメージを持つ上で非常によいと思います。
https://rika-net.com/outline.php?id=00002061008g&top=1
塩酸と石灰石が反応する化学変化は、次のような化学反応式で表すことができます。
CaCO2 + HCl → CaCl2 + H2O + CO2
ここで、H2Oは水の化学式です。また、CaCl2は塩化カルシウムという物質で水にとけます。
CO2は二酸化炭素なので、空気中に出て行きます。だからペットボトルはパンパンにふくらむのです。
密閉された状態では、二酸化炭素はペットボトルの中から出ていくことができません。
だから、
物質の出入りが全くない状態なので、化学変化の前後で質量は変化しない
のです。
ただし、ふたをゆるめると話は変わってきます。
ふたをゆるめるとプシュっという音がしました。
これは
二酸化炭素やもともとペットボトルの中にあった気体が出ていった音
です。
この状態で質量を測定すると
出て行った気体の分だけ質量は小さくなる
のです。
テストで「ふたをゆるめた後質量をはかると、質量が小さくなったのはなぜか」と聞かれたら
発生した気体が(容器の中から)出ていったから
と答えましょう。
今回勉強した2つの実験から、次のことが言えます。
物質の出入りがない状態で質量を測定すると、化学変化の前後で質量は変化しない
このことを「質量保存の法則」といいます。
「質量」とは物質の量のこと
を意味します。
「保存」とは(理科では)変わらない
を意味します。
「法則」とはいつでも・どこでも、起こること
を意味します。
つまり、
質量保存の法則・・・物質の量はいつでも・どこでも変わらない
という意味なのです。
でも、ちょっとくだけた言い方なので、テストでは
質量保存の法則・・・化学変化の前後において、物質全体の質量は変化しない
と答えるようにしましょう。
今回は、質量保存の法則について、基礎的なことを解説しました。
質量保存の法則はテストに出るだけではなく、全宇宙のどこでも通用する普遍の法則なのでしっかりと理解してほしい内容です。
とはいえ、テストでも非常によく出題される内容でもあります。
次回は応用編として、質量保存の法則の問題の解き方を解説していきます。
質量保存の法則②応用問題編~実際の問題を解くことで、理解を深めていこう~ | いやになるほど理科2021年1月12日 9:26 PM /
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