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こんにちは。頭文字Dです。
中学生に勉強を教えてかれこれ25年以上になります。その経験を活かして、「授業を聞いても理科がわからない人」を「なるほど、そういうことだったのか」と納得してもらおうとこの記事を書いています。
今日は、中学校2年生理科で習う【化学変化】から、鉄と硫黄の化合について説明します。
この記事は次のような人の疑問を解決します。
特に、(4)で紹介する「五・七・五で区切って覚える」で簡単に覚えることができます。この覚え方が何を意味するかについては(4)をご覧ください。
鉄と硫黄の化合の実験とその説明ですが、これまでに学習した「炭酸水素ナトリウムの熱分解」や「水の電気分解」に比べてかなりハードルが下がります。
(本当は、この実験から始めて少しずつハードルをあげて・・・というシナリオの方がよいと思うのですが・・・)
さて、どうしてハードルが下がっているかというと、次の2点が考えられます。
これまでに学習したような「水酸化ナトリウム」「炭酸ナトリウム」「炭酸水素ナトリウム」といった紛らわしい物質名は出てきません。
覚える必要があるのは「鉄」「硫黄」「硫化鉄(りゅうかてつ)」「硫化水素」の4つだけです。もちろん、普通の中学生であれば「鉄」と「硫黄」の名前くらいは知っているので、新しく覚えなければならないのは「硫化鉄」と「硫化水素」だけです。
このうち、「硫化水素」は応用編になるので、最低限覚えなければならないのは「硫化鉄」だけです。
さらに、この単元のキーポイントとなる化学反応式も簡単であるというおまけもついています。
化学反応式の書き方についてはいずれ説明しますが、化学反応式を書くときに一番難しい「係数会わせ」をやらなくてもいいことがこの実験を理解するハードルを下げています。
一見、とても人気が高い実験となりそうなのですが、実は
この実験が大嫌い
という中学生と理科の先生は非常に多いのです。
その理由は
とにかく臭い!!!!!
からです。
何となくイメージができると思いますが、「硫黄」を使うという段階で「くさい」と連想できます。
正確に言うと、硫黄自体はそれほどにおいません。実験によってできる「硫化鉄」が少しにおうくらいですが、実験の最後に発生する
硫化水素がとてもくさい!!!
のです。
だから、この実験を嫌う人は多いのです。
ただ、その分、強烈なインパクトを与える実験でもあるので、記憶には残りやすいというメリットもありますが・・・。
ここでちょっとだけ豆知識を。
理科の実験で使う”臭いもの”にはなにがあるでしょうか?
これまでに習ったところで言うと、アンモニア、硫化水素、塩素、二酸化硫黄・・・などでしょうか?
このうち、アンモニアには「窒素原子」が含まれています。
硫化水素と二酸化硫黄には「硫黄原子」が含まれています。
塩素(分子)には「塩素原子」含まれています。
この窒素原子、硫黄原子、塩素原子が含まれている物質は特有のにおいを持つことが多いのです。
これを覚えておけば、物質名を聞いてにおいそうかどうかを予想することができます。
それでは、実験を行っていきましょう。
最初に鉄粉を7g、硫黄を4gはかりとり、乳鉢などで混ぜ合わせましょう。
混ぜるときに情熱を込めて入念に混ぜる人が多いのですが、これは鉄と硫黄がある程度混ざっていればいいので、さっさとやってしまいましょう。
できた鉄と硫黄の混合物(この段階では鉄と硫黄は化合していません。だから、磁石などを使って鉄と硫黄を分離することができます。だから、この段階では”混合物”です。)を2つの試験管に分けて入れましょう。
なぜ分けるかというと、
です。
そして、片方の試験管をスタンドにセットしてガスバーナーで加熱しましょう。この加熱した試験管を”試験管A”とします。
加熱するときに注意することが1つあります。
それは
ことです。
どうしてかというと、混合物が赤くなるということは、鉄と硫黄が化合しているということです。
この化合しているときに、熱が発生します。(熱が発生するので赤く見えます。)
熱が発生するので、それ以上加熱する必要はないのです。
もしも、赤くなってもガスバーナーの加熱をやめなかった場合、試験管は内側から化合による熱を、外側からはガスバーナーからの熱を受けます。熱を受けすぎて変形したり、割れてしまう可能性があります。
だから、
のです。
この実験の様子は、こちらの動画をご覧ください。最後の男の人の表情がこの実験が嫌われる意味を全て表していて個人的に好きです。
https://rika-net.com/outline.php?id=00002056001g&top=1
また、この実験では試験管ではなく、アルミニウムはくを巻いたものを使っていますが、それでも反応時に赤くなっていることがわかります。一体、何℃になっているのだろう?
無事加熱が終わったら試験管Aが冷えるまで少し待ちましょう。
試験管Aが冷えたら、実験の続きを行います。
行う実験は2つ
念のためですが、この実験は順番が大事です。先に塩酸を入れてしまうと磁石への反応を調べることができなくなります。だからあくまでも、磁石が先です。
試験管Aに磁石を近づけるとあまり反応しません。理想としてはまったくくっつかないのですが、実際の実験ではなかなかそこまではできません。
加熱していない試験管Bは磁石によくつきます。
これは
です。
先ほどもいったように、鉄と硫黄を混ぜた混合物の状態であれば、鉄と硫黄は結びついていません。だから、磁石を使って鉄と硫黄を分離することができます。
加熱していない試験管Bの中には、鉄があるので試験管Bは磁石に近づいていくのです。
これに対して、試験管Aは磁石にあまり近づきません。
それは
です。
なお、ここまでさりげなく「化合」という言葉を使ってきましたが、意味を確認しておきましょう。
化合・・・2種類以上の物質が結びつくこと
また、
化合物・・・2種類以上の別の物質が化合した物質
です。
これらの言葉もテストによく出るので注意しましょう。
次に、2つの試験管に塩酸を入れてみましょう。
試験管Aに塩酸を入れると・・・
しました。
この気体を
と言います。
ちなみに、このときのにおい、どこかでかいだことがある人も多いのではないでしょうか?
よく
温泉のにおい
とか
たまごの腐ったにおい
などと言われます。
このにおいを
といいます。
とても臭い上に、有毒です。何年かに1度この硫化水素を吸い込んで起こる死亡事故も起きています。吸い過ぎに注意しましょう。
けっこうな間、硫化水素が発生すると思うので、試験管Aを少し離したところにおいて次の実験を行いましょう。
試験管Bに塩酸を入れてみましょう。
試験管Bに塩酸を入れると、こちらもブクブクと気体が発生します。しかし、においはありません。(たまに、ガソリンのようなにおいがするときがありますが、それは気体のにおいではありません。鉄と塩酸が反応してできるもう一つの物質、塩化鉄のにおいです。)
この気体をあつめて、火のついたマッチを近づけると、ポンと音がします。
このことから
であることがわかります。
まとめると
このことから、試験管Aに入っている物質と試験管Bに入っている物質は違う性質を持つことがわかります。
加熱した試験管Aに入っている物質を
と言います。名前の通り、鉄と硫黄が結びついてできた物質です。
このことから
ことがわかりました。
それではこの実験の覚え方です。
タイトルに書いたように、五・七・五で区切って覚えるとよいでしょう。
このようになります。
ぴったり五・七・五に当てはまりますね。
なお、これを
とノートに書けるようになってください。この後学習する化学反応式を書く最初の段階となります。
この実験も化学反応式で表してみましょう。
定期テストや高校入試でよく出題される化学反応式です。
となります。
覚えやすい化学反応式なので、あまり間違う人はいませんが、1つだけ注意してほしいのは硫化鉄の化学式です。
Sは大文字で書く
ことに注意しましょう。
それでは今日はここまでにします。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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