・電力・熱量・電力量の意味がわからない
・熱量と電力量って同じじゃないの?なんで2つも名前があるの?
・熱量の計算方法がわからない
という悩みを解消します。
こんにちは。頭文字(あたまもんじ)Dです。
中学生に勉強を教えてかれこれ25年以上になります。その経験を活かして、「授業を聞いても理科がわからない人」を「なるほど、そういうことだったのか」と納得してもらおうとこの記事を書いています。
今回は、中学2年生理科 電流分野から、「熱量」を求める問題について説明します。
「熱量」については、授業ではあまり詳しく説明されていないと思います。
そのため、ちゃんとした理解ができないままになっている人が多いと思います。
今回は、熱量について説明しながら、2つの計算方法を紹介していきます。
また、後半の「失われた熱量は何Jか問題」は入試の中でも最高レベルの計算問題です。
苦手意識を持っている人が少なくないのですが、一度きちんと理解してしまえばラッキー問題になります。
最後まで読んで、しっかりと理解してください。
最初に、皆さんは次の質問になんて答えますか?
「熱」って何ですか?
「ものの温かさのこと」「高いところから低いところに移るもの」「体温が高いこと」・・・などでしょうか?
「熱」という言葉は日常生活でもよくつかわれます。特に「熱い」「冷たい」「暖かい」「寒い」という言葉は毎日のように使っているのではないでしょうか。
それだけに、正確な意味を聞かれると答えにくいものです。
理科では、日常的に使われているものをきちんと定義することが難しい例がいくつかあります。
例えば「エネルギー」などがそうでしょう。
「エネルギー」の正しい意味を聞かれてすぐに答えることができる人は、ほとんどいないはずです。
・・・話が横道にそれました。
「熱の意味」の話に戻ります。
教科書では、「熱」をどのように説明ているのでしょうか。見てみましょう。
熱・・・物体の温度変化の原因
ということです。何となく理解できたでしょうか?
「そういえば、そうだね」くらいで理解できていれば問題ないでしょう。
では、次の質問には、なんて答えますか?
「熱量」って何ですか?
「熱の量のこと」と考えた人。素晴らしい!!
教科書には
熱量・・・移動した熱の量
と書かれています。そのまんまですね。素直に答えれば、正解するという問題でした。
それでは、熱量の求め方を見てみましょう。
熱量は、次の公式で求めることができます。
熱量【J】=電力【W】×時間【秒】
です。この公式は覚えてしまいましょう。
何度も声に出して・・・・
・・・で、気づきましたか?
どこかで見たことのある公式ですね。しかも、最近…。
「どこでみたのかな・・・」と思い出していくと、次の公式を思い出すでしょう。
電力量【J】=電力【W】×時間【秒】
そうです!「熱量」と「電力量」という言葉は違いますが、単位も含めて全く同じ公式ですよね。(電力量の求め方については、こちらの記事をご覧ください。)
電気エネルギーと電力・熱量・電力量2~高校入試の再頻出問題、「電力と電力量って何が違うの?」という疑問が解消する!~
実は、電力量と熱量は、同じものなのです。だから、どちらかを覚えてしまえば、もう一方もわかってしまうという、とってもお得な公式です。
でも、ここで皆さんは一つの疑問が浮かんでいるでしょう。
「同じものなら、わざわざ名前を2つつけることもないのに・・・覚えるの面倒くさいだけじゃないか!」
と。
その気持ちは、よくわかります。
しかし、2つの言葉を使うことになった理由はあるのです。
少し大げさに言ってしまうと、「科学の歴史」に関係する話です。
昔、「電力」を研究していった科学者がいました。その科学者は電力に時間をかけることで、電気エネルギーの量である「電力量」を求めることができることを発見しました。
また、違うところでは、「熱」を研究していった科学者たちがいました。彼らは、電熱線から発生する熱量は、電熱線の電力に時間をかけたものに等しいことに気づきました。
全然違う時期に、全然違う場所で、全然違うテーマで研究していった科学者たちがたまたま発見したのが電力量と熱量だったのです。
だから、同じ公式でも、名前は2つあるのです。
公式が同じということは、「本質的には一緒」ということです。
それでは、今日は熱量の計算を解いてみましょう。
問題1 電熱線に300Wの電流が30秒流れた。このとき、電熱線から出た熱量は何Jか。
問題2 15Vの電圧をかけると3Aの電流が流れる電熱線がある。この電熱線に1分間電流を流した時に発生する熱量は何Jか。
それでは、解いてみましょう。
暗算ができる人は暗算でもいいのですが、できない人は何かの紙に計算を書きながら解いてみてください。
【解答】
問題1 9000J
問題2 2700J
【解説】
問題1 公式に当てはめると
300(W)×30(秒)=9000(J)
となる。
問題2 この時の電力は
電力(W)=電圧(V)×電流(A)
で求められるので
15(V)×3(A)=45(W)
で、電力は45Wとなる。
公式に当てはめると、発生した熱量は
45(W)×60(秒)=2700(J)
で、2700Jとなる。
熱量の測定は、次のような器具を使って行います。
水を入れて、中にある電熱線に電流を流して水を温めます。
例えば、500Wの電流を10秒間流したとすると、その熱量は
500(W)×10(秒)=5000(J)
となって、5000Jであることがわかります。
これは、電熱線の電力と電流が流れた時間がわかればすぐに計算できます。
しかし、電熱線の電力や、電流が流れた時間がわからなかったら、どうでしょうか?熱量を計算できますか?
実は、電力や時間がわからなくても、熱量を求める方法があるのです。
それは
水の質量と上昇温度がわかっている場合
です。
1gの水を1℃温めるのに必要な熱量は4.2Jである
ことがわかっているからです。
次の例題を解きながら、水の質量と上昇温度から発生した熱量を求める方法を考えていきましょう。
例題1 水100gを5℃上げるのに必要な熱量は何Jか。ただし、水1gが1℃上昇するのに必要な熱量は4.2Jであるとする。
それでは、考えてみましょう。
このような問題では、解くためのちょっとしたコツがあります。
それは
「ただし」以下が大ヒントになっている
ことです。
これがヒントです。
5分考えてもわからなかったり、答えの予想ができたら、下の解答と解説を読んでください。
【解答】
2100J
【解説】
1gの水を1℃上昇させるのに4.2J必要である。
もしも、2gの水が1℃上昇するのに必要な熱量は
2(g)×1(℃)×4.2(J)=8.4(J)
となり、8.4Jとなる。
さらに、1gの水が2℃上がるのに必要な熱量は
1(g)×2(℃)×4.2(J)=8.4(J)
となり、8.4Jとなります。
このことから、水が1gの何倍になったのか、上昇温度が何倍になったかを考えて、4.2Jにかければいいことがわかる。
つまり、例題1の計算は
100(g)×5(℃)×4.2(J)=2100(J)
となって、2100Jということになる。
このように考えていくと、水の質量と上昇温度がわかれば、熱量を求めることができるのです。
この計算を公式として書いてみると次のようになります。
熱量(J)=水の質量(g)×上昇温度(℃)×4.2(J)
公式を覚えた方が解きやすいという人は、この公式を覚えてください。
(私、頭文字Dは公式を覚えるのがあまり得意ではないので、毎回、例題の解説で説明したように考えています。)
それでは、問題を解いてみましょう。
問題3 200gの水を2℃上昇させるために必要な熱量は何(J)か。ただし、水1gを1℃上昇させるのに必要な熱量は4.2Jだとする。
問題4 300gの水にを7℃上昇させるために必要な熱量は何(J)か。ただし、水1gを1℃上昇させるのに必要な熱量は4.2Jだとする。
それでは、やってみましょう。
レッツ・スタート!
【解答】
問題3 1680J
問題4 8820J
【解説】
問題3 200gの水が2℃上昇するのに使った熱量を計算すればよいので、
200(g)×2(℃)×4.2(J)=1680(J)
よって、1680Jとなる。
問題4 300gの水を7℃上昇させるのに必要な熱量を計算すればいいので、
300(g)×7(℃)×4.2(J)=8820(J)
よって、8820Jとなる。
それでは、次の例題を解いてみましょう。
例題2 くみおきの水200gに20Ωの電熱線を入れ、6Vの電圧を加えて10分間電流を流すと、水の温度が1℃上昇した。ただし、1gの水を1℃上昇させるのに必要な熱量は4.2Jとする。
(1)このとき、電熱線から発生した熱量は何Jか。
(2)水の温度上昇に使われた熱量は何Jか。
(3)(1)と(2)の差は何Jか。
(4)水の温度上昇に使われた熱量が、電熱線から発生した熱量よりも小さいのはなぜか。
ぐっと難しくなりましたね。
この問題は、高校入試でも最難関の計算問題に入るでしょう。
だから、「一目見てできる」人は少ないと思います。
それでも、5分くらいは考えてみましょう。
ヒントは、熱量の2つの計算方法を上手に活用することです。
・・・
それでは、解答と解説です。
【解答】
(1)1080J
(2)840J
(3)240J
(4)容器の外に逃げていく熱量があるから
【解説】
(1)「電熱線から発生した熱量」と書いてあるので、
熱量(J)=電力(W)×時間(秒)
の公式に当てはめて計算する。
問題から、電圧と抵抗はわかるが、電流がわからないので電力が求められない。
そこで最初に、電圧と抵抗をΩの法則の公式に当てはめて電流を求める。
電流(A)=電圧(V)÷抵抗(Ω)=6(V)÷20(Ω)=0.3(A)
次に、今求めた電流と電圧から、電力を求める。
電力(W)=電圧(V)×電流(A)=6(V)×0.3(A)=1.8(W)
最後に、今求めた電力と時間から熱量を求める。
熱量(J)=電力(W)×時間(秒)=1.8(W)×600(秒)=1080(J)
となって、1080Jとなる。
(2)「水の上昇温度に使われた熱量」と書いてあるので、
熱量(J)=水の質量(g)×上昇温度(℃)×4.2(J)
=200(g)×1(℃)×4.2(J)=840(J)
よって、840Jとなる。
(3) 今求めた(1)と(2)の答えの差(引き算の答)を求めればよい。
1080(J)-840(J)=240(J)
よって、240Jとなる。
(4) (3)で求めた熱量がどこに行ったのかというと、容器の外である。
だから、「容器の外に熱が移動した」というような内容が書かれていればよい。
いかがでしたか?
一度読んだだけではいまいち理解ができないところもあったかもしれませんが、何度も読んで理解を深めてください。
そして、同じような問題を繰り返し説くことが大切です。
今日の最後に、次の問題を解いてみましょう。
これができれば、高校入試の計算問題にかなり自信がつくでしょう。
問題5 くみおきの水150gに30Ωの電熱線を入れて12Vの電圧を5分間かけると、水の温度が2℃上昇した。次の問いに答えなさい。ただし、1gの水を1℃上昇させるのに必要な熱量を4.2Jとする。
(1)電熱線から発生した熱量は何Jか。
(2)水の温度上昇に使われた熱量は何Jか。
(3)容器の外に出ていった熱量は何Jか。
【解答】
(1)1440J
(2)1260J
(3)180J
【解説】
(1)「電熱線から発生した熱量」と書いてあるので、
熱量(J)=電力(W)×時間(秒)
の公式に当てはめて計算する。
ただし、電流の大きさがわからないので、オームの法則の公式に電圧と抵抗を代入して電流を求める。
電流(A)=電圧(V)÷抵抗(Ω)=12(V)÷30(Ω)=0.4(A)
次に、今求めた電流と電圧から、電力を求める。
電力(W)=電圧(V)×電流(A)=12(V)×0.4(A)=4.8(W)
最後に、今求めた電力と時間から熱量を求める。
熱量(J)=電力(W)×時間(秒)=4.8(W)×300(秒)=1440(J)
となって、答えは1440Jとなる。
(2)「水の上昇温度に使われた熱量」と書いてあるので、
熱量(J)=水の質量(g)×上昇温度(℃)×4.2(J)
の公式に当てはめて計算する。
熱量(J)=150(g)×2(℃)×4.2(J)=1260(J)
よって、答えは1260Jとなる。
(3) (1)と(2)で求めた答えの差を求めればよいので、
1440(J)ー1260(J)=180(J)
となり、答えは180Jとなる。
どうでしたか?
自力で解ければかなりの力があります。
また、解答と解説を読んでできるようになった人も、かなり力があります。
「よくわからない」という人も、安心してください。このブログを読んでいないほとんどの人が解けないはずです。
だからあせらず、もう一度よく読んで、計算できるようになりましょう。
勉強ができるようになるためには、根気が必要なのです。
T2023年10月10日 10:05 PM /
2の第4問 水、300gを7℃上げるのに必要な熱量を 水1gを1℃上げるのに必要な熱量が4.2Jのとき… (以下省略させて頂きます) この部分の解説の 式が 300(水の質量)×7(℃)×4.2(熱量) =88200(J) となっていますが、正しくは 式が 300(水の質量)×7(℃)×4.2(熱量) =8820(J) となります。 何度も電卓や筆算で計算しましたので間違いは無いと思います。おそらく、サイト主さんは4.2の小数点を計算し終えた後に戻し、0を1つ消すのを忘れたのだと思います。長文で申し訳ありませんでした。いつも分かりやすい説明で、助かっています!これからもよろしくお願いします!