・火花放電と真空放電って何が違うの?
・陰極線の特徴がわからない
という悩みを解消します。
こんにちは。頭文字(あたまもんじ)Dです。
中学生に勉強を教えてかれこれ25年以上になります。その経験を活かして、「授業を聞いても理科がわからない人」を「なるほど、そういうことだったのか」と納得してもらおうとこの記事を書いています。
今回は、中学2年生理科 電流分野から、「放電と陰極線」について説明します。
なお、最初に静電気の話をしますが、静電気についてはこちらの記事で詳しく説明しているので、合わせてごらんください。
冬の日のパチパチ君、静電気の実験~江戸時代から行われていた静電気の実験~
冬、セーターや上着を脱ぐときに、パチパチ・・・と光が見えたことがありませんか?
光が見えたとき、それはまさに「放電」している瞬間なのです。
念のために、言葉の意味を確認しておきましょう。
放電・・・電気が空間を移動したり、たまっていた電気が流れだしたりする現象
「電」流が「放」出されるから、「放電」なのです。読んで字のごとくですね。
ところで、静電気がパチパチ光った時の電圧っていくらぐらいだと思いますか?
実は、パチパチといった静電気の電圧は、数千Vから、数万Vにもなっているのです。
ちなみに、人間は何Aの電流が流れたら死ぬと思いますか?
人により多少の差はありますが、0.05Aくらいだと言われています。
・・・ちょっと気になりませんか?
静電気の電圧が数万V
人間が死ぬ電流が0.05A
って、静電気がちょっとパチパチ光ったら人間死んでしまうのでしょうか?
だとしたら、静電気はかなりやばいです。
おそらく、この記事を読んでいる人のほとんどが静電気パチパチを経験しているはずです。
つまり、みんな死んでしまっているはずです。
でも、当然のことながら、静電気がパチパチ光っただけでは死なないですよね。
これはどうしてでしょうか?
それは、
人間の体は電流が通りにくくなっているから
なのです。
言い換えると、
人間の体は抵抗が大きい
ということなのです。
だから、静電気がパチパチとなっても、大丈夫なのです。
ここで、「電圧」「電流」「抵抗」という言葉が出てきました。
電気を学習していくうえで、この3つの言葉は切っても切り離せない関係にあります。
その関係を「オームの法則」と言います。
オームの法則については、こちらの記事で詳しく説明していますのでご覧ください。
電流と電圧の関係(オームの法則)①~電圧・電流・抵抗の関係は、ペットボトルの水でバッチリ~
さて、話を「放電」に戻します。
物体に非常に大きな電圧がかかると空気中に電流が流れる放電が起こります。
このとき、パチパチと火花のような光が出ます。このような放電を「火花放電」と言います。
有名なのは、雷です。
雷は非常に大きな火花放電です。
積乱雲の中で上昇気流と下降気流が激しく入り混じり、雨粒や氷の粒がぶつかり合っています。
その時の摩擦によって静電気が発生します。雲の上の方に+の電気が、雲の下の方にマイナスの電気(電子)がたまります。
だいたい、数億Vから数十億Vの電圧になると放電が起こります。
雲の下の方にたまったマイナスの電気(電子)が地上に向かって移動する、それが雷であり、火花放電の一種なのです。
理科室では、誘導コイルを使って火花放電の様子を見ることができます。
写真のような装置に電流を流すと、金属と金属の間にパチパチと光が見えます。
もしも手を入れると・・・危ないので、絶対にやらないようにしましょう。
放電には、もう一つの方法があります。
それは、真空(に近い状態の)中に放電する方法です。
圧力を十分小さくした気体中で両端に電圧をかけて、放電を行ってみましょう。
すると、うすい線のような光が見えます。
真空に近い状態で放電すると、火花放電のようにパチパチという音がしません。
しかも、光が安定して光ります。
このような放電の方法を「真空放電」と言います。
火花放電と並べて、違いを覚えておきましょう。
火花放電・・・光や音をともなう、空気中での放電
真空放電・・・圧力を十分に小さくした気体中(真空に近い状態)を電流が流れる現象
ところで、この真空放電は身の回りにある、あるものに利用されています。わかりますか?
そうです!蛍光灯です。
蛍光灯は真空に近い状態にしたガラス管の中に放電して光らせる道具なのです。
そう考えると、真空放電ってけっこう身近に見ているのですね。
真空放電は、空気が少なくなればなるほど、光って見えます。
写真は、空気が比較的多いガラス管から、徐々に空気が少なくなっていった様子を撮影したものです。
圧力が高いときは紫色に、低くなると黄色っぽくなります。
先ほどの真空管よりもさらに空気を抜いたのがクルックス管です。1874年に、イギリスのクルックスさんが実験で使ったので、クルックス管と呼ばれています。
クルックスさんが行った実験で特徴的だったのは、クルックス管の中に+字型の金属板を入れたことです。
光を物体に当てれば影ができます。
その影ができる方向を調べれば、光がどちらから出ているのかを知ることができます。
クルックスさんが、+字型の金属板の影を見るとびっくりしました。
影が+極の方にできていた
からです。
「影が+極側にできるということは、何を意味するのか?」
考えられることは、ただ一つです。
電気はー極から出ている
ことです。
また、クルックス管の上下に電圧をかけると光の線は必ず+極側に曲がりました。
この様子を動画で見たい人は、こちらのサイトを推薦します。
理科ネットワークに掲載されている映像で、とても分かりやすいです。
https://rika-net.com/outline.php?id=40100380&top=1
これは、何を意味しているのでしょうか?
考えられることは、ただ一つです。
電気の光はーの電気を帯びている
ことです。
ここで、それまでの常識を根本からくつがえす、事実が証明されたのです。
それは、
電気の流れとは、ーの電気がー極から+極に向かって移動している
ということです。
それまでは、「電流は+極からー極に流れる」と信じられていたので、クルックスさんの発見はとても衝撃的なものでした。
本来であれば、それまで信じられてきた「電流は+極からー極に流れる」という考えを捨てるべきだったのかもしれません。
しかし、科学者たちは、次のように定義すると決めたのです。
”電流”は+極からー極に流れる。
”マイナスの電気(電子)”はー極から+極に流れる。
「あれ?」と思った人もいるでしょう。
電流の正体はマイナスの電気で同じもののはずなのに、流れる方向が全く逆になっています。
これは明らかに矛盾しています。
しかし、それまでにつくられたすべての電気器具のプラスとマイナスを入れ替えることが現実的に不可能であったため、このように決めて考えることにしたのです。
だから、問題を解くときには、何が流れている方向を聞かれているのかを確認することが大切です。
大事なことなので、もう一度書いておきます。
電流は+極からー極に流れる
マイナスの電気(電子)はー極から+極に流れる
うっかりすると間違えてしまうので、問題文をよく読んで答えるようにしましょう。