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こんにちは。頭文字(あたまもんじ)Dです。
中学生に勉強を教えてかれこれ25年以上になります。その経験を活かして、「授業を聞いても理科がわからない人」を「なるほど、そういうことだったのか」と納得してもらおうとこの記事を書いています。
今回は、中学2年生理科化学変化の単元の中から「発熱反応・吸熱反応」を説明します。
今回の記事では次のようなことがわかります。
・発熱反応や吸熱反応の利用されている場所
・化学カイロの実験のやり方と理論
・吸熱反応の実験
下の記事を読んでいくとわかるのですが、今日勉強する発熱反応は酸化反応のときに起こることがあります。
酸化反応についてはこちらで詳しく説明しているので、ご覧ください。
酸素と結びつく反応~意外といろいろなところで利用されている酸化反応~
最初に、今日勉強する発熱反応と吸熱反応とは何かについてまとめておきましょう。
発熱反応・・・周りに熱を放出する化学変化
吸熱反応・・・周りから熱を吸収する化学変化
です。
最初に、発熱反応や吸熱反応がどのような場所で利用されているかを紹介していきます。
例えば、勉強や仕事の合間にコーヒーを飲むとします。または、お腹がすいたのでカップラーメンを食べようとしたとします。
多くの人が、台所に行ってやかんに水を入れてガスコンロでお湯を沸かすのではないでしょうか。
ガスコンロでお湯を沸かすとき、私たちは発熱反応を利用しているのです。
ガスコンロでは都市ガスやプロパンガスという気体に火をつけて炎を燃やしています。
理科的な目で見ると、このとき次のような化学変化が起こっています。
都市ガス + 酸素 → 二酸化炭素 + 水
プロパンガス + 酸素 → 二酸化炭素 + 水
この反応が起きるときには、大量の熱が周りに放出されます。この熱を利用してお湯を沸かしているのです。
このほかに発熱反応が利用されている場面としては、化学カイロがあります。
スキーやスケートに行くときに携帯用カイロを利用する人は多いのではないでしょうか。私も利用しています。とても便利ですね。
この携帯カイロは発熱反応を利用したものです。
詳しくは次の章で説明しますが、携帯カイロの中にある鉄が空気中の酸素と反応するときに大量の熱が放出されます。携帯カイロはその熱を利用したものなのです。
次に熱を吸収留守反応である「吸熱反応」が利用されている場面を紹介します。
例えば、風邪をひいて熱がある場合を考えてみましょう。
そのようなときは頭を冷やしますね。
または、足をひねったりしたときに患部を冷やすことがあります。
そのようなとき、吸熱パックを利用することがあります。(基本的に1回きりの使い捨てですが、使い終わった後に冷凍庫で凍らせて再利用している人がいます。再利用しているときは吸熱反応ではないので、注意してください。)
これは硝酸アンモニウムや尿素といった物質が水にとけるときに吸熱反応が起こることを利用した製品です。
吸熱パックをたたくのは、中に入っている水が入った袋を割って、物質を水に溶かしているのです。
このほかにもいろいろなところで発熱反応・吸熱反応は利用されています。「熱くなったな」とか「冷えたな」と思ったときには、化学変化が起こっていないか考えてみるのも面白いかもしれませんね。
では、発熱反応と吸熱反応は何が違うのでしょうか?
これについては、恋愛に例えるとわかりやすいと思います。
一般的に、発熱反応が起こるのは
別々の物質が結びつくとき
です。
逆に、吸熱反応が起こるのは
1つの物質が分かれるとき
なのです。
これは、恋愛に例えるとわかりやすいかもしれません。
男女がつきあい始めるとき、心はアツアツに燃え上がります。だから、発熱反応です。
逆に男女が別れるとき、心は冷え切っています。だから、吸熱反応です。
このように理解しておくのもよいかと思います。
それでは、実験を行っていきましょう。
どの会社の教科書も、発熱反応の実験には「化学カイロ」を使っています。
やり方を説明します。
鉄粉と活性炭素を混ぜ合わせたものに、食塩水を数滴加えます。
かき混ぜて少し待つと温度が急激に上がっていきます。
この実験の様子は、こちらの動画をご覧ください。
https://rika-net.com/outline.php?id=00002059011f&top=1
この実験を上手に行うと80℃近くまで温度が上昇することがあります。ただし、急激に温度が上がるということは、その分早く反応が終了します。
先ほど、「別々の物質が結びつくときに発熱反応が起こる」と書きましたが、この実験では何と何が結びついているのでしょうか?
反応の様子をアニメーションで紹介した動画があるので、こちらをご覧ください。
https://rika-net.com/outline.php?id=00002069001f&top=1
動画を見てわかるとおり、この実験では
鉄と(空気中の)酸素が反応している
のです。
動画でも解説していますが、活性炭素と食塩水は反応していないので注意してください。
では、なぜ活性炭素と食塩水を加えるのでしょうか?ここでわからなくなる中学生が多いので簡単に説明していきます。
まずは、活性炭素を入れる理由です。
活性炭素を入れると鉄が空気とふれあいやすくなる
のです。
活性炭素には目に見えないくらい小さい穴がたくさん空いています。その穴の中に大量の酸素を含んでいるのです。
だから、活性炭素を入れておくと鉄の周りの酸素の量が多くなります。その分、反応が早く起こるのです。
もう一つ、食塩水を入れる理由について説明します。
食塩水を入れると反応が早く進む
のです。
よく、「金属が海水に濡れるとさびやすくなる」という話をきかないでしょうか?実際に海岸沿いの街の車はさびやすいといわれます。
「さび」とは非常に緩やかに起こる酸化反応のことです。金属が海水に触れると酸化しやすくなるのです。なお、古くなった10円玉がくすんだ色になるのも、さびるからです。
この現象を利用するために、化学カイロの実験では少量の食塩水を加えるのです。
なお、このときの食塩水のように、化学変化の進み方を早くする物質を「触媒(しょくばい)」と言います。
次に吸熱反応の実験を行います。
ビーカーに水酸化バリウムと塩化アンモニウムを入れます。このとき、最初は混ざらないように、ビーカーの端と端におくのがコツです。
温度計で最初の温度を測ったら、実験開始です。ガラス棒などでかき混ぜてみましょう。
かき混ぜるときは、
濡れたろ紙を上にのせておく
のがポイントです。(テストに出ることはないけど)
混ぜ合わせると温度がどんどん下がっていきます。中には-4℃くらいまで下がることもあります。
同時に、刺激臭も発生します。
鼻をつくようなにおい・・・そうです!アンモニアが発生するのです。
アンモニアが発生するので、少しでもにおいを減らそうと水に濡らしたろ紙をおいているのですが・・・あまり効果はないような・・・。
さきほど、「1つの物質が分かれるときに吸熱反応が起こる」と書きましたが、この実験で、どの物質が何に分かれているのでしょうか?
まず、水酸化バリウムはバリウムイオンと水酸化物イオンという物質(3年生で学習するイオン)に分かれます。
もう1つ、塩化アンモニウムは、塩化物イオンとアンモニウムイオンという物質(これもイオン)に分かれます。
1つの物質が分かれるので吸熱反応が起こるのですが、分かれた後この反応はもう少し進みます。
先ほどできたバリウムイオンと塩化物イオンが結びついて塩化バリウムという物質ができます。また、水酸化物イオンとアンモニウムイオンが結びついて、アンモニアと水ができます。
テストで聞かれることはまずあり得ないのですが、この実験でおこる反応は次のようになります。
水酸化バリウム + 塩化バリウム → アンモニア + 水 + 塩化バリウム
発熱反応と吸熱反応はいたるところにあります。今回紹介できなかったのですが、水に物質が溶けるときにも発熱反応が起きていることがあります。