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こんにちは。頭文字(あたまもんじ)Dです。
中学生に勉強を教えてかれこれ25年以上になります。その経験を活かして、「授業を聞いても理科がわからない人」を「なるほど、そういうことだったのか」と納得してもらおうとこの記事を書いています。
今回は、中学2年生理科化学変化の単元の中から「質量保存の法則」を説明します。
今回の記事では次のようなことがわかります。
・質量保存の法則に関する基本的な問題の解き方
・質量保存の法則に関する少々難しめの問題の解き方
今回の記事は、前回の応用編に位置付けられます。
前回の記事をまだ見ていない人は、こちらをご覧ください。
質量保存の法則~”いつでも・どこでも・質量は変わらない”という全宇宙普遍の法則~
また、実験の様子が見たいという人は、こちらのサイトをご覧ください。
(塩酸と石灰石の反応)
https://rika-net.com/outline.php?id=00002057002g&top=1
なお、化学式の下につける数字が書けないので、赤で表しています。ご承知おきください。
実際に問題を見てみましょう。
問題1 塩酸を入れた試験管と石灰石をペットボトルの容器の中に入れ、全体の質量を測ると、70.5gだった。その後、ふたをしっかり閉めたまま容器をかたむけて、塩酸と石灰石を反応させると気体が発生した。次の問いに答えなさい。
(1) この実験で発生した気体の名前を答えなさい。また、その気体の化学式を書きなさい。
(2) 塩酸と石灰石を反応させた後の全体の質量は何gか。
(3) (2)のような結果になるのは、何という法則によって説明できるか。
(4) 容器のふたをゆるめてから質量を測ったところ、70.0gであった。このような結果になった理由を書きなさい。
よく見る問題だと思います。
実験の操作順に出題してくれているので、答えやすいですね。
それでは、実際に解いてみてください。できればノートか何かの紙に答えを書いてから、続きを見るようにしてください。自分の頭で考えてから答えを見るのが大切です。
少し下の方に解答と解説を書いておきますので、考え終わったら下の方にスクロールしていってください。
(1) 二酸化炭素・CO2
*塩酸と石灰石が反応しているので、二酸化炭素が発生します。これについては、1年生の時に学習しているので、忘れていたら1年生の教科書で確認してください。また、二酸化炭素の化学式はCO2です。
(2) 70.5g
*密閉した容器の中で反応が行われているので、質量は変化しません。
(3) 質量保存の法則
*質量が変わっていないので、「質量保存の法則」が成立しています。詳しい説明はこちらをどうぞ。
質量保存の法則~”いつでも・どこでも・質量は変わらない”という全宇宙普遍の法則~
(4) できた気体が容器から出ていったから
*実験で、ペットボトルのふたをとるとプシュと音がしました。これは、中の気体が出ていったからです。
それでは、次の問題を解いてみましょう。
問題2 次の実験について、問いに答えなさい。
【実験】
①容器A、Bに硫酸と水酸化バリウム水溶液を入れて、容器ごと全体の質量を測った。
②容器A、Bの溶液を混ぜた後、容器ごと全体の質量を測った。
(1)容器A,Bの溶液を混ぜるとどのような変化がみられたか。ア~エから選びなさい。
ア 気体が発生した イ 沈殿が生じた
ウ 透明な青色の溶液になった エ 何も起こらなかった
(2) 反応が終わった後の全体の質量は、反応前に比べてどうなったか。次のア~ウから選びなさい。
ア 増加した イ 減少した ウ 変わらなかった
(3) (2)のような結果になった理由を説明しなさい。
この問題も一度自分で解いてみましょう。解答と解説は下の方に書いておくので、自分で解いてから見るようにしましょう。
では、がんばってください。
それでは、解答と解説です。
(1) イ(沈殿が生じた)
*硫酸と水酸化バリウム水溶液が混ざると「硫酸バリウム」という水に溶けにくい物質ができます。硫酸バリウムができるのは、硫酸ナトリウムと塩化バリウムを混ぜ合わせたときと同じです。
(2) ウ(変わらなかった)
*気体が発生する化学変化ではないので、物質の出入りはありません。だから、質量は変化しません。
(3) 質量保存の法則
*「化学変化の前後で質量が変化していない」ので質量保存の法則です。
どうでしょう?簡単でしたか?
質量保存の法則の実験に関する問題は、けっこう出題されるのでカンペキに正解できるようにしましょう。
問題3 塩酸40cm³が入ったビーカーの質量を測ったところ、52.0gであった。その後、塩酸に炭酸水素ナトリウムを入れると二酸化炭素が発生したので、再びビーカーの質量を測った。この方法で、塩酸40cm³に対して、加える炭酸水素ナトリウムの質量を1.0g、2.0g、3.0g、4.0g、5.0g、6.0gにして実験をした結果を表にまとめた。次の問いに答えなさい。
炭酸水素ナトリウム 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 6.0
ビーカーの質量 52.6 53.2 53.8 54.4 55.4 56.4
(1)塩酸に炭酸水素ナトリウムを1.0g加えたとき、発生した二酸化炭素は何gか。
(2)実験結果から、二酸化炭素の質量がわかるのは、何という法則があるからですか。
(3)加えた炭酸水素ナトリウムの質量と発生した二酸化炭素の質量の関係を、下のグラフに書きなさい。
(4)実験の結果から、この塩酸80cm³に炭酸水素ナトリウムを6.0g加えたとき、発生する二酸化炭素は何gになりますか。
かなり難易度が上がったと思いますが、まずは自分で解いてみましょう。できればノートなどに(特に(3))書いてから下を見てください。
それでは、解答と解説です。
(1)0.4g
【解説】この反応を密閉した容器の中で行うと、質量は52.0(g)+1.0(g)=53.0(g)になる。
しかし、実際に測ってみると52.6gなので、この質量の差が発生して逃げて行った二酸化炭素だと考えられる。
だから、53.0(g)ー52.6(g)=0.4(g)
となる。
(2)質量保存の法則
(3)
【解説】(1)とおなじようにして、各段階で発生した二酸化炭素の量を書いていくと、次のようになる。
炭酸水素ナトリウム 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 6.0
二酸化炭素 0.4 0.8 1.2 1.6 1.6 1.6
これをグラフにブロットすると、次のようになる。
ここで線の引き方がポイントになる。
炭酸水素ナトリウムが1.0g~3.0gまでは
塩酸の方が多い状態
を意味している。
この段階では
炭酸水素ナトリウムを入れれば入れるほど二酸化炭素が増える
だから、右上がりの直線(赤色の線)になる。
しかし、炭酸水素ナトリウムが4.0g~6.0gのときには
二酸化炭素が増えていない
状態である。
これは
炭酸水素ナトリウムの方が多い状態
である。
この段階では
炭酸水素ナトリウムを入れても二酸化炭素は増えない
だから、横軸に平行の直線(青色の線)になる。
(2つのグラフが合わさっているということを、わかりやすくするために色分けしています。テストで答えるときには、線を色分けする必要はありません。)
このような問題では、次のような考えがポイントになります。
理科では、グラフの傾きが変わるときに化学変化が変わる
このことは応用問題で聞かれることが多いので、覚えておくとよいでしょう。
(4)2.4g
*塩酸の量が2倍になっているので、炭酸水素ナトリウムを6.0g入れても塩酸の方が多い状態である。
このような時は、炭酸水素ナトリウムを入れただけ二酸化炭素が発生する。
つまり、塩酸40cm3に炭酸水素ナトリウム3.0gを入れたときの、2倍の二酸化炭素が発生すると考えられるので、
1.2(g)×2=2.4(g)
となる。
今回は、質量保存の法則に関わる基本問題と、応用問題を扱いました。
法則は意味を覚えるだけではなく、使いこなせるようになることが重要です。
ちょっと難しい問題もありましたが、ここまで理解できるようになることを目標にしましょう。