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こんにちは。頭文字(あたまもんじ)Dです。
中学生に勉強を教えてかれこれ25年以上になります。その経験を活かして、「授業を聞いても理科がわからない人」を「なるほど、そういうことだったのか」と納得してもらおうとこの記事を書いています。
今回は、中学2年生理科化学変化の単元の中から「酸素を失う反応(還元)」を説明します。
今回の記事では次のようなことがわかります。
・還元反応の利用され方
・酸化銅と炭素の反応
・酸化銅と水素の反応
今日勉強する還元反応は酸化反応と同時に起きる逆の反応です。
そのため、酸化反応について理解してから学習すると、より効果的です。
酸化反応についてはこちらで詳しく説明しているので、ご覧ください。
酸素と結びつく反応~意外といろいろなところで利用されている酸化反応~
私たちの身の回りにはいろいろな金属製品があります。
ざっと見回しても、10円玉の原料である銅や、100円玉の原料である亜鉛。台所にあるステンレスやジュースの容器に使われている鉄(スチール)やアルミニウムなど。本当に至る所にいろいろな金属が使われています。
多くの場合、金属は地中から掘り出されます。
わかりやすいところでいうと、金山や銀山などのように山の中などから掘り出されるのです。
ところが、掘り出された金属は金属の状態ではないのです。
・・・少々難しい表現を使ってしまいました。
ここでいう、「金属」とは「金属の性質を持つ物質」のことです。
金属の性質とは・・・1年生の時に習いましたね。
①金属光沢がある
②電気を通しやすい
③たたくと広がったり、引っ張ると伸びる
④熱を伝えやすい
の4つです。
この4つの性質を持つ物が「金属」です。
鉄や銅、アルミニウム、亜鉛などの物質は全て「金属」です。
ところが、金属がその性質を失うことがあります。
それは
他の原子と結びついたとき
です。
鉄を酸化させた実験を思い出して見ましょう。
鉄(スチールウール)を加熱して(空気中の酸素と化合させて)できた酸化鉄は、金属の性質を持っていませんでした。
黒くて、電気を通さず、もろくなっていました。
同じ鉄でもこれでは金属の性質を持っていません。
だから、「金属ではない」のです。
というように、土の中から掘り出された金属の原子は「金属ではない状態」になっていることが多いのです。
例えば、鉄は「鉄鉱石」という状態で掘り出されます。
銅は、「赤銅鋼」という状態で掘り出されます。
これらの物質は金属の原子と酸素が結びついています。
そこで
金属として取り出すには、酸素を取り除くことが必要
になってくるのです。
それでは、金属の酸化物から酸素を取り除く反応を行ってみましょう。
実験には酸化銅を使います。最初に、炭素と反応させてみましょう。
酸化銅2.5gと炭素0.2gを混ぜて試験管に入れます。ガラス管つきゴム栓をして、ガラス管の先を石灰水の中に入れます。
実験の様子はこちらの動画をご覧ください。
https://rika-net.com/outline.php?id=00002056005g&top=1
見ての通り、加熱をしていると石灰水が白く濁ります。
二酸化炭素が発生している
ことがわかります。
この実験では、注意点が1つあります。
それは
加熱をやめる前に、ガラス管を石灰水から取り出す
ことです。
こうしないと石灰水が試験管の中に入り込み、試験管が割れる可能性があります。
同じ注意点は炭酸水素ナトリウムの熱分解でもありました。
炭酸水素ナトリウムの熱分解については、こちらをご覧ください。https://rika-net.com/outline.php?id=00002057021f&top=1
加熱が終わったら、ゴム管をピンチコックではさんで、空気が入らないようにします。空気が入ってしまうとすぐに酸化が始まってしまうので、忘れずにピンチコックではさみましょう。
試験管が冷めるまで少し待って、試験管の中を見ると、黒かった酸化銅が赤くなっています。
ろ紙の上にのせて薬さじで強くこすると、特有の光沢が見られます。
金属光沢が見られるので、
この物質は金属である
ことがわかります。
酸化銅からできた金属なので
銅
であると推測することができます。
それでは、酸化銅と炭素の反応を化学反応式で表してみましょう。
酸化銅と炭素を混ぜました。また、二酸化炭素と銅ができたので
酸化銅 + 炭素 → 銅 + 二酸化炭素
となります。
酸化銅は「CUO」、炭素は「C」、銅は「Cu」、二酸化炭素は「CO2」(下付きの数字が書けないので赤で表しています)なので、
酸化銅 + 炭素 → 銅 + 二酸化炭素
CuO + C → Cu + OCO
となります。
最初に、Oの数を合わせます。
左辺にOは1個、右辺には2個あるので、左辺に酸化銅「CuO」を1つ加えます。
次に、Cuの数を数えます。
左辺にCuは2個、右辺に1個あるので、銅「Cu」を1つ右辺に加えます。
念のため、Cの数を数えます。
左辺にCは1個、右辺にも1個なので、これ以上会わせる必要はありません。
ということで
酸化銅 + 炭素 → 銅 + 二酸化炭素
CuO + C → Cu + OCO
CuO Cu
となります。
最後に、化学式で表します。
酸化銅 + 炭素 → 銅 + 二酸化炭素
CuO + C → Cu + OCO
CuO Cu
CuO + C →2CuO + CO2
となって、化学反応式は
CuO + C →2CuO + CO2
となります。(下付きの数字が書けないので赤で表しています)
さて、でき上った化学反応式を見てみましょう。
酸化銅(CuO)は酸素を失って銅(Cu)になりました。酸素を失う化学変化を「還元」と言ったので
酸化銅(CuO)は還元されて銅(Cu)になった
と言えます。
ところが、この化学反応式にはもう1つ大事な化学変化が起こっています。
それは炭素(C)の変化です。
炭素(C)は酸素を受け取って二酸化炭素(CO2)になっています。
これは次のことを意味しています。
還元が起こるときには、必ず酸化が起こっている
ということです。
このように、酸化と還元は常に同時に起こっているのです。ここも大事なポイントです。
酸化銅を還元する方法は他にもあります。
よく使われるのは「水素」を使う方法です。(専門的な装置が必要になるので、中学校の実験で行っているところはほとんどないと思いますけど。)
高温に熱した酸化銅に水素を吹きかけると、赤色の物質になります。
それでは、この化学変化の化学反応式を書いてみましょう。
酸化銅と水素が反応すると、銅と水ができます。
これを式で表すと
酸化銅 → 銅 + 水
となります。
酸化銅は「CuO」、水素は「H2」、銅は「Cu」、水は「H2O」なので、
酸化銅 + 水素 → 銅 + 水
CuO + HH → Cu +HHO
となります。
それでは係数あわせをしていきましょう。
最初にCuは左辺に1個、右辺に1個あります。
続いて、Hは左辺に2個、右辺にも2個あります。
Oは左辺に1個、右辺に1個あります。
以上のことから、すでに左辺と右辺で原子の種類と数は変わらないということがわかりました。
だから、これ以上係数あわせをする必要はありません。
最後に化学式で表して、化学反応式を完成させましょう。
酸化銅 + 水素 → 銅 + 水
CuO + HH → Cu +HHO
CuO + H2 → Cu +H2O
となるので、化学反応式は
CuO + H2 → Cu + H2O
となります。
還元の問題はテストでよく聞かれます。
しっかりと復習をしておきましょう。
酸化銅の還元~還元実験の典型的問題 ポイントは還元と同時に起こる反応だ~ | いやになるほど理科2021年1月15日 10:40 PM /
[…] また、酸化銅の還元の説明は、こちらの記事をご覧ください。 酸化物が酸素を失う反応~酸化と同時に起きるとっても大切な反応~ […]