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イオンの応用問題①~難関のイオン問題は、実は、ワンパターン問題だ。まずは、酸・アルカリで頻出問題の”電気泳動”の問題を得意にしよう~

 「イオンの問題が解けない」
 「イオンって難しい」
 「酸・アルカリの問題で何が出るかわからない」

と悩んでいないでしょうか?
 実は、イオンの問題は、中学校理科の最難関と言えるほど、超難しいのです。
 しかも、実力テストや高校入試では頻出の問題なのです。
 だから、イオンを苦手としている中学生は実に多いのです。
 でも、あまり知られていない事実があります。
 実は、
イオンの問題はワンパターン問題が多い
のです。
 これは、以前からお伝えしている
難しい問題は、ワンパターン問題の法則
に一致するのです。
 1つずつ、しっかりと理解して、ストック(知識量)を積み重ねていけば「また同じ話?あきたよ」という程度の問題です。
 私は、25年以上中学生に理科を教えています。
 その中で、「どうしたら中学生が少しでも理科がわかるようになるのか」について研究してきました。
 そして一つの確信を得ています。
難問は良質の問題を繰り返し解くことで確実に解けるようになる
と。
 この記事を読み終えるときには、イオンの問題(特に“酸・アルカリ”の問題)をどのように解けばよいかがわかるでしょう。
 今までわからなかったテスト問題が、「なるほど、こういうことだったのか」と納得できれば、大きな自信となって理科が好きになるでしょう。
 この記事を読んで、「”いやになる”理科」から、「いやに”なるほど”理科」にしましょう。
 本記事の内容
①酸・アルカリでよく出る電気泳動の問題の解き方がわかる
②電気泳動の問題の解き方がわかる

 それでは、詳しい説明です。

1 電気泳動の問題を解いてみよう

 最初に、とってもよく出題される「電気泳動」の問題を考えていきましょう。
 なお、「電気泳動って何?」という人は、こちらの記事を読んでください。
酸性・アルカリ性の正体~笑っちゃうくらいうまくできる!電気泳動の実験のしかた~
 それでは、問題です。
問題1 4種類の水溶液A~D(うすい硫酸、うすい塩酸、うすい水酸化ナトリウム水溶液、砂糖水)を用意し、次の①~③の実験を行った。次の問いに答えなさい。
【実験】
①それぞれの水溶液にフェノールフタレイン液を入れて、色の変化を調べた。
②下の図1のように、それぞれの水溶液に電極を入れて1.5Vの電圧を加え、電流が流れるかどうかを調べた。

③図2のように硫酸ナトリウム水溶液をしみこませたろ紙を金属製のクリップでガラス板にとりつけ、その上に青色と赤色のリトマス紙を置いた。そこに、水溶液Dをしみこませた糸を置き、片方のクリップを陽極、もう一方のクリップを陰極として電圧を加え、リトマス紙の色の変化を調べた。

(1) 水溶液Aは何であると考えられるか。
(2) (1)のように、水に溶かしたときに、電流が流れない物質を何というか。
(3) ③の結果について説明した次の文の( )にはどのような言葉が入るか。下のア~カから選びなさい。
( 1 )のリトマス紙の糸にふれた部分の色が変わり、電極間に電圧を加えると、色が変わった部分がしだいに( 2 )に広がった。このことから、アルカリ性の水溶液にふくまれる( 3 )が、( 1 )のリトマス紙の色を変えたと考えられる。
ア 赤色  イ 青色  ウ 陽極側  エ 陰極側  オ 陽イオン  カ 陰イオン
(4) ③で、リトマス紙の色を変えたイオンを、イオン式で書きなさい。

 典型的な電気泳動の問題です。
 基本的な内容を確認しておきましょう。
・酸性の正体は水素イオン(H+)である。

*青字の負号+-や数字は、上に小さく書く数字のことです。
・アルカリ性の正体は水酸化物イオン(OH)である。
・電圧をかけると、水素イオンは陰極側(ー極側)に引き寄せられる。
・電圧をかけると、水酸化物イオンは陽極側(+極側)に引き寄せられる。
・酸はリトマス紙を青→赤に変化させる。
・アルカリはリトマス紙を赤→青に変化させる。
・水にとけると電流が流れる物質を「電解質」という。
・水にとけても電流が流れない物質を「非電解質」という。
・アルカリの水溶液にフェノールフタレイン液を入れると赤色になる。

 こんなところでしょうか?
 これだけわかれば、解けると思います。
 さきほどわからなかった人は、上の基本知識を参考にして解きなおしてみましょう。
 それでは、解答と解説です。
【解答・解説】
(1) 砂糖水(水溶液Aは電流が流れなかった。4つの水溶液のうち、電流が流れないのは、砂糖水だけ。)
(2) 非電解質(水にとけても電流が流れない物質を”非電解質”という。)
(3) BとC(マグネシウムを入れると水素が発生するのは、酸。酸はフェノールフタレイン液の色を変化させない。)
(4) OH(水溶液Dはアルカリ性。つまり、OHが電離しており、このOH(水酸化物イオン)がリトマス紙の色を変化させている。)
 どうでしょうか?できましたか?
 できなくても心配ありません。
 同じような問題をどんどん解いて、問題に慣れていけば、コツがわかるでしょう。
 それでは次の問題です。
問題2 図のように、スライドガラスに硝酸カリウム水溶液をしみこませたろ紙を置き、その上に緑色のBTB液をしみこませたろ紙を置いた。中央に水酸化ナトリウム水溶液をしみこませた糸を置いたところ、糸の周りの色が変化した。その後、スライドガラスの両端を金属のくいっぷで止めて電圧をかけると、中央部分で色の変化が見られた。

(1) 硝酸カリウム水溶液をろ紙にしみこませるのはなぜか。
(2) 水酸化ナトリウムが電離する様子を、化学式とイオン式を用いて書きなさい。
(3) 水酸化ナトリウム水溶液をしみこませた糸のー極側と+極側では、BTB液をしみこませたろ紙の色はどう変化したか。

 先ほどとは、ちょっと問題の傾向が違っているようです。
 わからない人は次のヒントを読んでみてから解いてみましょう。
ヒント
(1) 電源装置を使っているのは、電流を流そうとしているから。
(2) 水酸化ナトリウムはアルカリ性。アルカリ性であれば、電離すると水酸化物イオン(OH)ができる。
(3) BTB液は、酸性で黄色、アルカリ性で青色に変化する。また、アルカリ性の正体は水酸化物イオン(OH)である。

 それでは、もう少し頑張って考えてみましょう。
 何かの紙に自分の答えを書いてから、下の解答と解説をご覧ください。
 それでは解答と解説です。
【解答・解説】
(1) 電流を流れやすくするため
(2) NaOH → Na+ + OH(水酸化ナトリウムの化学式は”NaOH”、アルカリ性なので”OH”が電離する。残りは、”Na+”なので、Na+とOHを+でつなげて書けばよい。)
(3) ―極側:変化しない
    +極側:青色になった
(水酸化ナトリウムはアルカリ性なので、OHがBTB液の色を変化させる。OH-は+極側に引き寄せられるので、+極側のBTB液が青色に変化する。)
 できましたか?
 ヒントや基本知識をもとに考えることができれば、十分に合格です。
 後は、テストまでに基本知識を覚えればよいからです。
 それでは、3問目です。
問題3 図のように、電流を通しやすくするために硝酸カリウム水溶液をしみこませたろ紙をガラス板の上に置き、両端を目玉クリップでとめ、ろ紙の上に青色リトマス紙A、Bと赤色リトマス紙C,Dを置いた。うすい塩酸をしみこませた糸を真ん中に置き、一方のクリップを陽極、もう一方のクリップを陰極として電圧を加え、リトマス紙の色の変化を観察した。

(1) 塩化水素のような電解質が、水にとけて陽イオンと陰イオンに分かれることを何というか。
(2) 塩化水素が水にとけて、イオンに分かれるようすを、化学式とイオン式で書きなさい。
(3) 色が変化したリトマス紙を、A~Dから選びなさい。
(4) うすい塩酸の代わりにうすい水酸化ナトリウム水溶液をしみこませた糸を使って、同じように実験を行ったとき、色が変化したリトマス紙を、A~Dから選びなさい。
(5) (4)のとき、リトマス紙の色を変化させたイオンを、イオン式で書きなさい。

 そろそろ、問題の傾向が見えて来たでしょうか?
 これまでの3問を振り返ると
・電気泳動の問題では、「どのリトマス紙(またはBTB液やフェノールフタレイン)の色が変わるか」が問われる。
・基本的な用語や、実験の反応式が問われる。
・「糸(または細く切ったろ紙)にしみこませた液体を変化させるとどうなるか」を問われる。

 このように考えていくと、電気泳動の問題にはパターンがあることがわかってきます。
 それでは、考えてみましょう。
 自分の答えを何かの紙に書いてから解答と解説を読んでください。
【解答・解説】
(1) 電離(電解質が水にとけて、陽イオンと陰イオンに分かれることを”電離”という)
(2) HCl → H+ + Cl-(塩化水素の化学式は”HCl”、塩化水素は水にとけると酸性を示すので、”H+”が分かれる。残りの”Cl-”と”H+”を+で並べて書けばよい)
(3) A(酸性の水溶液はリトマス紙を青→赤に変化させる。酸性の正体は水素イオン(H+)であり、陰極にひきつけられる。だから、Aのリトマス紙が変化する。)
(4) D、OH-(水酸化ナトリウムは水にとけるとアルカリ性を示す。アルカリ性の正体は水酸化物イオン(OH-)であり、陽極にひきつけられる。だから、Dのリトマス紙が変化する。)
どうだったでしょうか?
 なんとなく「基本的な知識があれば考えられた」という実感を持てたでしょうか?
 それであれば、十分に力がついています。
 後は、テストまでに基本知識を身に付けばよいからです。
 実感が持てなかった人は、もう一度この記事を読み直して考えてください。
 1回目よりも、理解できるはずです。
 何事も繰り返すことで力がついてきます。
 根気よくがんばってください。

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