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イオンの応用問題③~難問は、ワンパターン問題だ!わからなかった電気分解が、わかるようになる問題集~

 「イオンの問題が解けない」
 「イオンって難しい」
 「電気分解の問題が全然理解できない」

と悩んでいないでしょうか?
 実は、イオンの問題は、中学校理科の最難関と言えるほど、超難しいのです。
 しかも、実力テストや高校入試では頻出の問題なのです。
 だから、イオンを苦手としている中学生は実に多いのです。
 でも、あまり知られていない事実があります。
 実は、
イオンの問題はワンパターン問題が多い
のです。
 これは、以前からお伝えしている
難しい問題は、ワンパターン問題の法則
に一致するのです。
 1つずつ、しっかりと理解して、ストック(知識量)を積み重ねていけば「また同じ話?あきたよ」という程度の問題です。
 私は、25年以上中学生に理科を教えています。
 その中で、「どうしたら中学生が少しでも理科がわかるようになるのか」について研究してきました。
 そして一つの確信を得ています。
難問は良質の問題を繰り返し解くことで確実に解けるようになる
と。
 この記事を読み終えるときには、イオンの問題(特に今回は“電気分解”の問題)をどのように解けばよいかがわかるでしょう。
 今までわからなかったテスト問題が、「なるほど、こういうことだったのか」と納得できれば、大きな自信となって理科が好きになるでしょう。
 この記事を読んで、「”いやになる”理科」から、「いやに”なるほど”理科」にしましょう。
 本記事の内容
・イオンの単元で出てくる”電気分解”の問題の解き方がわかる
・イオンの問題と組み合わされることが多い「身の回りの物質(1年生)」の問題の解き方がわかる。
それでは、詳しい説明です。

1 電気分解の問題を解いてみよう

 最初に、電気分解の問題を解いてみましょう。
「電気分解って何?電気分解できるのは水だけじゃないの?」という人は、こちらの記事をご覧ください。
塩化銅の電気分解・塩酸の電気分解~電解質の水溶液に電流が流れるとき、必ず何かの変化が起こっている~
 それでは、問題です。
問題1 図のように、塩化銅水溶液に2本の炭素棒を電極にして、電源装置で3Vの電圧を加えると、電子オルゴールから音楽が流れ、電流が流れていることが分かった。電圧を変えずに電流を流し続けた結果、片方の炭素棒の表面に赤茶色の金属Xが付着し、もう一方の炭素棒からは、プールの消毒液のようなにおいの気体Yが発生した。

(1)炭素棒に付着した赤茶色の金属Xは何か。
(2)(1)とは違う炭素棒から発生した気体Yは何か。
(3)塩化銅が水に溶けたときの電離の様子を、化学式とイオン式で書きなさい。
(4)赤色の固体Xが付着した炭素棒での反応について述べた文として正しいものを、ア~エから選びなさい。
ア この電極は陰極で、陽イオンが電子を受け取って固体となった
イ この電極は陽極で、陽イオンが電子を離して固体となった
ウ この電極は陰極で、陽イオンが電子を受け取って固体となった
エ この電極は陽極で、陽イオンが電子を離して固体となった
(5)電流を流し続けると電流の大きさはどのように変化するか。また、その理由を書きなさい。

 この問題は、電気分解の典型的な問題だと言えます。
 だから、しっかりと解けるようになりましょう。
 基本がしっかりできていれば「この問題は、あの時見た問題と似ているな」「あの問題の考え方と同じ考えで解ける」ということがわかってきます。
 少し時間を取って考えて、自分の答えを何かの紙に書いてから解答と解説を読んでください。
 それでは、解答と解説です。
【解答と解説】
(1)銅  「金属が付着した」ので銅であることがわかります。
(2)塩素 塩化銅水溶液を電気分解したときに、発生する物質は「銅」と「塩素」です。(1)では銅が付着したので、もう一方の炭素棒からは「塩素」が発生します。
(3)CuCl2 → Cu2+ + 2Cl   塩化銅が電気分解すると、「銅イオン(Cu2+)」と「塩化物イオン(Cl)」になります。塩化物イオンが2つであることに注意しましょう。

*このブログでは、下付きや上付きの文字が書けないので、「赤字は下に小さく書く数字」「青字は上に小さく書く数字や文字」を表しています。
(4)ア  銅イオンは陽イオンです。陽イオンは―極(陰極)にひきつけられます。―極で電子を受け取って原子になります。(この実験では、銅イオンが電子を2個受け取って銅原子になります)
(5)電流の大きさ:小さくなる
理由:イオンが少なくなるから
 電気分解を行っていくと、イオンが原子となるので、イオンの数が少なくなります。イオンが少なくなると、電子を運ぶものがなくなっていくので、電子は流れにくくなり、電流は小さくなります。

 どうでしょうか?
 解けないまでも、解説を読んで「なるほど」と思えるようになるのであれば、問題を解いていくことで力をつけることができます。
 反対に、「解説を読んでもわからない」という人は、問題を解く前に教科書の内容を解説した記事を読んだ方がいいでしょう。
 「回り道をする時間がない」という人もいるかと思いますが、実は、これが一番の近道なのです。
 とりあえず、次の記事を読んでみてください。
 それから、解いてみると理解度が上がっているはずです。
 続いて、「身の回りの物質(1年生)」の内容と組み合わせて出題される例を紹介します。
問題2 図の電気分解装置を用いて、質量パーセント濃度0.1%の塩酸を電気分解したところ、陰極から水素、陽極から塩素の気体が発生した。

(1) 塩酸にとけている気体は何か。
(2) (1)の物質が水溶液中で電離している様子を、化学式とイオン式で書きなさい。
(3) 塩素の性質について謝っているものを、ア~エから1つ選びなさい。
ア 刺激臭がある   イ 殺菌作用がある
ウ 脱色作用がある  エ 空気よりも軽い
(4) 実験を行うために、2.0%の塩酸を水で薄めて0.1%の塩酸180gを作った。このとき、2.0%の塩酸は何g必要か。

 それでは、解いてみましょう。
 何度も言いますが、必ず紙に書くことです。
 めんどくさいと思うかもしれませんが、力の付き方が違います。
 いいですか。何かの紙に書くのですよ。
 それでは、解答と解説です。
【解答と解説】
(1) 塩化水素   塩酸は正確にいうと「塩化水素水溶液」です。塩化水素の化学式はHClで、「塩素と水素が結びついた物質」です。なお、ふつうは塩酸(塩化水素水溶液)の化学式もHClで表します。
(2) HCl → H+ + Cl
塩化水素(HCL)は水に溶けると電離して、水素イオン(H+)と塩化物イオン(Cl)に分かれます。
(3)エ  塩素の性質は「刺激臭がある(プールのにおい)」「殺菌作用がある」「脱色作用がある」です。
(4)9g   2%の塩酸をXgとすると、含まれているHClは0.02Xと表すことができる。
質量パーセント濃度の公式に当てはめると、
0.02X
―――— ×100=0.1
180
これを計算すると
X = 9
となるので、答えは9gとなります。

 (4)の問題は非常に高度な計算問題です。このような問題が出てくるテストは、かなりの難関校や難関な定期テストだと思います。
 それでは、次の問題を解いていきましょう。
問題3 図のような装置を使って、質量パーセント濃度が2.5%の塩化銅水溶液100gに電流を流したところ、電極Aに赤茶色の固体が付着し、電極Bからは気体が発生した。次の問いに答えなさい。

(1) 塩化銅は、水溶液中でどんなイオンに電離しているか。イオン式を使った反応式で書きなさい。
(2) 電極Aに付着した固体が金属であることを確かめるためには、どのようなことをするとよいか。その方法と予想される結果を書きなさい。
(3) 電極Bについて、正しく説明しているものを、ア~エから選びなさい。
ア 陰極で、陰イオンがひきつけられた
イ 陰極で、陽イオンがひきつけられた
ウ 陽極で、陰イオンがひきつけられた
エ 陽極で陽イオンがひきつけられた
(4) D君は、水溶液中の塩化銅が、1.0g電気分解したとき、塩化銅水溶液の質量パーセント濃度は何パーセントになるかを計算した。D君が計算した式が下の図である。下の図の①、②に入る数字を書きなさい。(計算する必要はない)ただし、電気分解で発生した気体が、塩化銅水溶液にとけこむことは考えないこととする。


 そろそろ「見たことがある」「さっきやった問題だ」と思えるようになっているでしょうか?
 そうです。
イオンの問題は、難しいけどワンパターン問題が多い
のです。
 これは、私が常々言っている
難しい内容ほどワンパターン問題が多くなる、サービス問題である
ことに一致します。
 それでは少し自信が出てきたと思いますので、問題を解いてみましょう。
【解答と解説】
(1)CuCl2 → Cu2+ +2Cl  塩化銅(CuCl2)は銅イオン(Cu2+)と塩化物イオン(Cl-)2つに電離します。
(2)方法:薬さじで強くこする
結果:光沢(金属光沢)が見られる
塩化銅を電気分解して得られる固体は銅です。「身のまわりの物質(1年生)」で学習したように、金属であることは「薬さじなどで強くこする」ことで「金属光沢を確認する」ことによって確認できます。
(3)ウ  電極Bは、電源装置の+極につながっています。+極(陽極)には陰イオンが近づいてくるので、「ウ 陽極で、陰イオンがひきつけられた」が正解になります。
(4)①1.5  ②99
2.5%塩化銅水溶液100gに含まれる塩化銅は2.5gである。塩化銅が1.0g電気分解されたので、水に溶けている塩化銅は「2.5-1.0=1.5g」となる。また、水溶液全体でも1.0g減っているので、「100-1.0=99」となる。水溶液が1.0g減ることに注意しましょう。

 いかがでしたか?
 ちょっと難しかったでしょうか?
 しかし、振り返ってください。
特に難しかった問題は、「身のまわりの物質(1年生)」ではないでしょうか?
 しかも、ほとんどの人が「質量パーセント濃度の問題」に難しいと感じたはずです。

 つまり、イオンの問題(電気分解の問題)よりも質量パーセント濃度の問題の方が難しいのです。
 理科ではよくあることですが、「1年生だから簡単」「3年生だから難しい」ということにならない場合があります。
 だから、高校入試の対策をするときには、1年生の内容もしっかり復習するようにしましょう。
 なお、質量パーセント濃度の求め方については、いずれ解説していく予定です。

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