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無性生殖と有性生殖~”寿命”は進化がつくりだした?生物の殖え方と寿命の意外な関係~

 「生殖って何?」「無性生殖と有性生殖って何が違うの?」という疑問や、「植物は無性生殖、動物は有性生殖でしょ」と間違った理解をしている中学生たちにお送りします。
 こんにちは。頭文字(あたまもんじ)Dです。
中学生に勉強を教えてかれこれ25年以上になります。その経験を活かして、「授業を聞いても理科がわからない人」を「なるほど、そういうことだったのか」と納得してもらうためにこの記事を書いています。

1 生殖の2つの方法~生物は進化するために”死”を選択した~

 まずは、言葉を1つ覚えましょう。
生殖・・・生物が、自らと形や性質が同じ子をつくるはたらき
 この言葉は、以前も説明しているので、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
メダカの卵の観察のススメ~理科室で観察できる!短時間で観察できる!生物の発生の観察の新定番~
 まあ、生物であれば、自分と同じ性質の子どもをつくるのは当然のことです。
 でも、ここで疑問があります。
親と全く同じ性質の子どもだけができたら、どうなるのか?
と。
 考えてみてください。
 親と待った同じ形や性質の子どもだけができた世の中を・・・。
 人間でいえば、お父さんもお母さんも同じ顔・・・いや、親と全く同じ性質だから、男女の違いもないはず・・・。だとしたら、どうやって子どもが生まれるんだろう・・・。
 と、人間では考えにくいのですが、他の生物では親と全く同じ性質の子どもをつくることがけっこうよくあります。
 わかりやすい例が、単細胞生物の分裂です。
 単細胞生物のゾウリムシやアメーバは1個体(1つの親)が2つに分かれ、新しい個体(子)をつくります。

 このときの、親と子は全く同じ性質です。これは、1つの親から生まれているので、変化のしようがないからです。このように、1つの親から生まれる生殖(正確に言うと、”受精”によらない生殖)を”無性生殖”と言います。
 単細胞生物にはミドリムシのように植物も、アメーバのように動物もいますが、どちらも分裂をします。
 だから、「植物だから無性生殖をする」「動物だから無性生殖をしない」というのはどちらも間違えです。
 正しくは、「植物にも動物にも無性生殖をする生物がいる」のです。
 同じものが2つに分かれるだけなので、基本的に”死”はありません。正確にいうと、”寿命がない”ということになります。
 いいですよね。死ぬ心配がない命なんて。
 でも、外の環境が何かの原因で変わると(例えば、住んでいた池に水が入ってこなくなって、乾いてしまったなど)死んでしまいます。寿命は無くても、”事故死”はあり得るのです。みんな同じ性質なので、環境が変わるとみんなが死んでしまいます。
 これは困りますね。
 だから、生物は、次のようなシステムを作り出しました。
 性質が少しだけ異なる(人間でいう男女など)2つの個体が協力して1つの個体(子)をつくりだす
 2つの個体が1つの個体を生み出すときには、自分たちの生殖細胞(精子・卵・静細胞・卵細胞)の核を合体させます。この、生殖細胞の核が合体する現象を「受精」といいます。
 そして、受精による生殖の方法を「有性生殖」といいます。
 受精すると2つの親の性質を半分ずつ受け継ぎます。
 だから、無性生殖と違って、自分と全く同じものが生み出されることがなくなります。
 親の体は年月を重ねることによって古くなっていきます。
 そして、生命活動ができなくなります。これが”寿命”です。
 受精を行う生物は多細胞生物です。単細胞生物は細胞分裂のみによって殖えていくので受精を行いません。
 知っての通り、生物は単細胞生物から多細胞生物に進化しました。
 ということは、生物が誕生した時には「寿命がなかった」ということになります。(今も単細胞生物には”寿命”がありません。)
 つまり、
生物は、進化の過程で「死」をつくりだした
ことになります。
 どうして「死」をつくりだしたのでしょうか?
 それは、
いろいろな環境に対応して、多くの子孫を残すため
だと考えられています。
 親と全く同じであれば、ちょっとでも環境が変わると生きていられなくなります。
 そこで、親と少しずつ違う性質をもった子をたくさん作ることによって、環境の変化や、違う環境の中でも生きていく方法を選択し、”寿命”というものをつくったのです。
 ”寿命”があることで、生物は”多様性”を手に入れたのです。
 そう考えると、”死”や”寿命”というものにも、ちゃんと意味があるということがわかりますね。

2 無性生殖の利用方法~親と全く同じだから、できること~

 生物の多様性を考えると、無性生殖よりも有性生殖の方が好ましいと思えます。
 しかし、別の視点で考えると、無性生殖の方がよいものもあるのです。
 例えば、植物の栽培です。
 ここに、おいしいタマネギがあるとします。
 このタマネギをたくさん栽培して、お金を儲けたいとします。
 この時に、有性生殖をするとどうなるでしょうか?
 親と同じおいしいタマネギができることもありますが、逆においしくないタマネギができることもあります。
 また、「おいしいけど親のタマネギと味が違う」ということも出てくるでしょう。
 なぜなら、有性生殖の場合は、親と少しずつ違う性質になっていくからです。
 これではちょっと困るので、農作物をつくるときには、親の体の一部を土に植えることがあります。
 例えば、タマネギは土や水の中に入ると根が出てきて、新しい子をたくさん生み出します。

 受精をしない生殖なので、無性生殖です。
 また、タマネギのように、自分の体の一部から親と同じ新しい個体をつくる無性生殖を「栄養生殖」といいます。
 タマネギのほかにもジャガイモ、サツマイモ、コメなどの作物で利用されています。
 小学校の時にジャガイモの栽培を行ったことがある人は多いでしょう。
 その時に、「種イモ」を植えたと思いますが、この栽培方法がまさに栄養生殖を利用した農業なのです。
 ジャガイモの他にも、チューリップの球根を植えた経験がある人もいると思います。
 よく勘違いされるのですが、球根は種ではありません。読んで字のごとく、根の一部です。
 栄養がたくさんたまっているので、育ちやすいのでチューリップを栽培したいときには球根を植えます。
 動物の無性生殖の例を紹介します。
 みなさんは、ヒトデを知っているでしょうか?
 海に行くと砂浜で干からびていたりする、星形の生物です。
 このヒトデはとても再生力が高い生物です。
 種類によっては真っ二つになっても、元の形に戻ります。もちろん、2つに分かれたから、2つの個体となります。
 この再生こそ、ヒトデの無性生殖なのです。
 なお、1本のうでになっても再生できる人では6種類ほどで、思ったよりも多くありません。再生するには、ある程度の大きさが必要なようです。
 詳しくは、こちらのサイトがわかりやすくて、お薦めです。
https://www.tokyo-zoo.net/topic/topics_detail?inst=kasai&link_num=294
 今回は雑談が多くなってしまいましたが、テストに出題される要点をまとめます。
①生物が自分と同じ形・性質の子孫を残す働きを「生殖」という
②生殖には「無性生殖」と「有性生殖」がある
③無性生殖・有性生殖は動物にも植物にも見られる(ただし、すべての生物が両方の生殖をおこなうわけではない)
④無性生殖には「分裂」や「栄養生殖」がある

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