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遺伝の法則~メンデルの実験と遺伝の法則・いろいろな生物に共通する生物学の3大発見の1つ~

「メンデルの実験って何?」
「遺伝子ってどのように伝わっていくの?」

という疑問を持つ中学生の疑問を解決します。
 こんにちは。頭文字(あたまもんじ)Dです。
中学生に勉強を教えてかれこれ25年以上になります。その経験を活かして、「授業を聞いても理科がわからない人」を「なるほど、そういうことだったのか」と納得してもらうためにこの記事を書いています。
本記事の内容
①メンデルはエンドウを使った実験で遺伝の法則に気付いた
②遺伝の規則性は2つの法則(顕性の法則・分離の法則)で説明することができる
③遺伝の規則性は、どのような生物にも共通している

 それでは、詳しい説明を書いていきます。

1 まずは、基本的な言葉を覚えよう

 それでは、この記事を理解するために必要な知識を身に付けましょう。
 最初に、最低限、この言葉を覚えましょう。
対立形質・・・同時に現れることのない形質
 これだけの説明では不十分なので、補足します。
 同時に現れることのない形質とは、具体的に
丸い種子としわがある種子
黄色い子葉と緑色の子葉
緑色のさやと黄色のさや

などのことです。
 「半分だけ黄色くて反対側は緑色の種子」は存在しないということです。
 その他に、覚えておくと理解が深まる言葉を紹介します。
自家受粉・・・同じ花、または同じ個体の花における受粉
他家受粉・・・他の個体の花における受粉
純系・・・何世代自家受粉しても、同じ形質を示すもの

2 メンデルが発見した法則①~顕性の法則~

 それでは、メンデルが行った実験を紹介します。
 メンデルの肖像画をご覧ください。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B0%E3%83%AC%E3%82%B4%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%A8%E3%83%8F%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%A1%E3%83%B3%E3%83%87%E3%83%AB#/media/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:Gregor_Mendel_Monk.jpg
 首に十字架をかけているのがわかるでしょうか?
 メンデルの本職は神父さんでした。
 神父の仕事をする傍ら、修道院にある畑でエンドウを栽培していたのです。
 エンドウは自家受粉をする植物ですが、メンデルはここでエンドウを他家受粉させてみたのです。
 例えば、丸い種子のエンドウとしわの種子のエンドウを他家受粉させると、できる子のエンドウはどうなるか・・・?
という実験を行ったわけです。
 すると、
子のエンドウは全て丸になった
のです。
 メンデルは、同じように他家受粉させたときの他の形質も調べました。
 すると、次のようになりました。
種子の形(丸としわ)・・・全て丸
子葉の色(黄色と緑色)・・・全て黄色
種皮の色(有色と無色)・・・全て有色
さやの形(ふくれとくびれ)・・・全てふくれ
さやの色(緑色と黄色)・・・全て緑色
花のつき方(葉の付け根と茎の先端)・・・全て葉の付け根
丈の高さ(高いと低い)・・・全て高い

 ここでメンデルは子のエンドウにはどちらかの形質しか現れないことに気づいたのです。
 そして、
顕性の法則・・・生じた子(個体)には一方の形質だけが現れる
と名づけたのです。
 また、
顕性(けんせい)形質*1・・・子に現れる形質
潜性(せんせい)形質*2・・・子に現れない形質

と名付けました。
*1 以前の教科書では「優性形質」と呼ばれていました。
*2 以前の教科書では「劣性形質」と呼ばれていました。

3 メンデルが発見した法則~分離の法則~

 メンデルはさらに、生じた子を自家受粉させて孫の代の形質も調べました。
 種子の形が丸の子を自家受粉させると、何と孫の代には丸い種子もしわの種子も現れたのです。
 この傾向は、他の形質でも見られ、顕性形質と潜性形質の割合は全て3:1となりました。
 まあ、ここまでがメンデルの実験の部分です。有名なメンデルの実験ですが、ここまでなら、他にも気づいていた人は他にもいたと思います。
 しかし、メンデルのすごいところは、この実験の結果を見事に説明したところにあります。
 先ほど説明した顕性の法則のほかに、もう一つ(実際には二つ)の法則を考えたのです。
 それが
分離の法則
です。
 どういうものかというと、
分離の法則・・・生殖細胞がつくられるとき、対になっている遺伝子は分かれて別々の生殖細胞に入る
ということです。
 そして、受精(2つの生殖細胞が合体すること)と遺伝子はまた対になる、というものです。
 先ほどの顕性の法則と分離の法則がどのように成り立っているのかを図を用いて説明します。
 なお、顕性形質をA(”ラージエー”と読む)、潜性形質をa(”スモールエー”と読む)と書くことにします。
 今回は、Aを丸い種子の遺伝子、aをしわの種子の遺伝子にします。
 まず、”AA”という遺伝子の型をもつ親と、”aa”という遺伝子の型を持つ親を他か受粉させたとします。
 AAの親がつくる生殖細胞は”A”と”A”です。
 aaの親がつくる生殖細胞は”a”と”a”です。

 この4つの生殖細胞がつくる組み合わせは、すべて”Aa”となります。

 この場合、顕性形質であるA(丸い種子)の方が形質として現れるので、子の形質は全て丸となり、実験の結果と一致します。
 続いて、”Aa”という遺伝子を持つ子を自家受粉させたときの、孫に現れる形質を考えていきます。
 どちらの親も”Aa”なので、”A”と”a”の遺伝子を持つ生殖細胞ができます。

 この4つの生殖細胞の組み合わせは4種類になります。
 ”AA”、”Aa”、”aA”、”aa”です。

 顕性の法則から、
”AA”は丸、
”Aa”と”aA”は丸(”Aa”と”aA”は同じものとして考えることができ、どちらも”Aa”と表すのが一般的です。)
”aa”はしわ

となり、丸としわの種子の数が、3:1となり、実験の結果と見事に一致することになります。
 エンドウの他の形質でも全く同じことが言えます。
 また、ショウジョウバエの目の色や、ヒトの血液型も同じように考えることができ、有性生殖であれば、どのような生物でも同じことがいえることが後の研究でわかっています。
 次回は、具体例を用いて詳しく説明していきます。
 それでは、今回はここまでとします。
<補足 メンデルのもう一つの法則>
 今回は、メンデルが考えた「顕性の法則」と「分離の法則」を紹介しました。
 しかし、メンデルはもう一つの法則も考えていました。
 それが
独立の法則・・・2種類以上の対立形質は、互いに影響を及ぼさない
というものです。
 例えば、種子の形(丸かしわか)という対立形質と、種子の色(黄色か緑色か)という対立形質は、それぞれ別で、影響しあうことはないということです。
 ただし、この法則については、その後エンドウ以外の生物で例外がいくつも発見されました。
 そのため、独立の法則は現在では法則として認められていません。

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